MICPCH症候群(CASK異常症)の小脳低形成の分子メカニズムを解明するために、X染色体にGFP発現カセットを有するHprt-GFPマウスとCASKノックアウトマウスを交配し、細胞レベルで、X染色体不活性化ニューロンを識別することを試みた。GFP陽性ニューロンは、CASK正常染色体由来であることから、これを指標にこのマウスの小脳を解析したところ、小脳の顆粒細胞で、成長に伴ってGFP陽生細胞の比率が増加する結果が得られた。このことから、CASK遺伝子欠損のcell autonomous効果により、小脳顆粒細胞が細胞死を起こしていることが示唆された。CASK floxホモマウスの小脳から粒細胞培養を作成し、レンチウィルスによりCre組換え酵素を導入すると、顆粒細胞が時間とともに死滅していった。CASK欠損顆粒細胞培養に、レンチウィルスを用いてヒト患者から見つかったCASKのミスセンス変異を有するコンストラクトを導入し、顆粒細胞死がレスキューできる変異とレスキューできない変異に分類した。レスキューできない変異のうち、4種類はCASKのCaMKドメイン内の変異で、PyMoLソフトウェアを用いてこの変異をCASK CaMKドメインの3次元構造上にマッピングすると、このうち3つはLiprin-a2との結合面に位置していることが判明した。Deep Mind社が開発した、AlphaFold 2.2を用いて、機械学習によりこれらの変異の影響を調べたら、3つはLiprin-a2との結合を特異的に阻害しており、残り1つはCASKタンパク質のfoldingに影響を与えていることが判明した。これらのことから、MICPCH症候群における小脳低形成には、CASKとLiprin-a2との結合を介しているとの結論に達した。
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