研究課題/領域番号 |
19H03546
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
西村 正樹 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 教授 (40322739)
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研究分担者 |
中野 将希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (00823890)
渡邊 直希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (60769339)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / リスク遺伝子 / アミロイドβ / 遺伝子発現制御 / 先制医療 |
研究実績の概要 |
Alzheimer病の疾患修飾治療(disease-modifying therapy)の実現には、認知症発症前の予防的介入が必須とされるなか、新たな治療戦略の開拓が不可欠である。本課題では初期病態を引き起こすリスク分子に注目している。本症の分子病態は、Aβペプチドの脳内蓄積によりトリガーされることから、脳内Aβ蓄積に対するリスクを軽減することは根源的な病態抑止につながると期待される。一方、従来の知見から、特定の遺伝子発現制御によって発症リスクを軽減できる可能性が考えられる。本研究では、脳Aβ蓄積のリスク遺伝子のうちFAM3CとAPPを対象として、遺伝子転写制御(促進ないし抑制)をゲノム改変を伴わずに可能にするCRISPR/dCas9を用いた介入システムの構築と臨床応用を目指した検討を進めている。 令和3年度までに、FAM3C発現誘導とAPP発現抑制を可能にするCRISPR/dCas9システムの最適化を進めてきた。まず、ヒトFAM3C遺伝子の内因性転写制御機構の解析を完了し、論文発表した(Hum Mol Genet 2022)。この解析結果をもとに、CRISPR/dCas9システムの構築に向け、転写開始点上流転写調節領域をターゲットとした短鎖ガイドRNA (sgRNA)を設計し、培養細胞を用いて発現誘導の有効性を比較検討した。また、コードされるDNAサイズが比較的小さいS. aureus Cas9を用いて効率を検討した。加えて、Synapsin Iプロモーターを用い神経細胞特異的な系を構築した。APP遺伝子に関しても、プロモーター解析から転写活性領域を確認し、CRISPR/dCas9システムの構築を行った。現在、APPとFAM3Cの両系について、マウス個体へのテストを開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(Ⅱ)標的遺伝子の転写調節メカニズム解析: FAM3C遺伝子のプロモーター活性を示す領域の同定、転写因子候補の同定を行い、論文発表した。APPについても、同様の解析を進めた。 (Ⅲ)培養細胞を用いたCRISPR/dCas9システムの構築:(a) sgRNAの検討:最も効率の高いsgRNAを選択した。 (b) dCas9の検討:コードされるDNAサイズが比較的小さいS. aureus Cas9を用いて効率を比較検討した上、さらに部分欠失を試みて最小サイズのコンストラクトを得た。(c) 神経細胞特異的なCRISPR/dCas9システム:Synapsin Iプロモーターを用いて選択性を確認した。 (Ⅳ)マウス個体を用いたCRISPR/dCas9システムの投与:AAV9ベクターを用い、マウスへの末梢静脈内投与を試み、解析を進めている。ヒトAPP-YAC Tgマウスは入手済、ヒトFAM3C発現レポーター Tgマウスは作製を完了し繁殖中である。 新型コロナ感染症蔓延により、一部の試薬等の入手に遅れが生じているが、全般の進捗には大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
(Ⅳ)マウス個体を用いたCRISPR/dCas9システムの検証:これまでに最適化したCRISPR/dCas9システムとAAV9ベクター系を用いて、末梢静脈内投与を試み、FAM3CとAPPの脳内発現変化を定量的に解析する。モデルマウスとしては、ヒトAPP-YAC Tgマウス(入手済)およびヒトFAM3C発現レポーター Tgマウス(作出済)を用いる計画である。
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