研究課題/領域番号 |
19H03547
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
櫻井 武 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (90615717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 社会性ストレス / 脳内炎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトゲノム解析から精神疾患への関与が明らかになっているシナプス分子のシャンク3遺伝子を改変したマウスと、疫学から関与が明らかな母体炎症にさらされたマウスを用いて、思春期でもっとも大きなストレスの社会性ストレスによって引き起こされるであろう脳内炎症が、これら脆弱性を持つマウスの脳での脳機能ネットワークの発達成熟のどの過程にどのような影響を及ぼして特異的な行動変化につながるかを明らかにすることを目的とする。 今年度はこの2つのマウスモデルを確立し、その行動表現型の解析を行った。シャンク3マウスモデルには生後3週目から社会性孤立ストレスを思春期を通じて、また母体炎症モデルには思春期社会性敗北ストレスをかけて、脳に脆弱性を持つマウスへの思春期ストレスモデルを構築した。思春期社会性敗北ストレスモデルについては今まであまり報告がなかったので、条件検討を行い、思春期マウスへの適度なストレスのレベル、適度なストレスの負荷の持続時間について条件を確立した。 このように条件設定を行ったマウスモデルについて、社会性行動、ワーキングメモリー、不安行動、新奇性反応性などの様々な認知機能ドメインについて行動解析を行ったところ、どちらのマウスモデルも高架十字迷路テストで不安行動の亢進を示した。これは社会性ストレスをかけた時に見られることから、脳に脆弱性を持つマウスが社会性ストレスを加えられた時に影響を受けやすい回路と関わりがある行動表現型と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今まで報告されていない、思春期社会性ストレスモデルと脳に脆弱性のあるマウスモデルの組み合わせでなんらかの行動表現型が見られることは今後の本研究の展開に必須データであり、それを予定通り一年目に得ることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
行動表現型の元にある回路の変化を脳内炎症に注目して解析を行う。また神経回路の機能的な変化を電気生理学的な解析法を用いて明らかにする。前者についてはまず免疫組織科学的手法を用いて炎症の部位とそれに関与する細胞種を同定する。さらに免疫学的手法を用いて細胞種をさらに細かく解析する。後者については研究分担者の協力を得て脳の急性スライスを用いて神経活動の変化を電気生理学的に解析する。 特定の免疫細胞の関与が認められたならば、そういった細胞を遺伝的に除去したマウス等を用いて脳内炎症の回路変化へのそれらの細胞の関与をさらに明らかにしていく予定である。
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