研究課題/領域番号 |
19H03548
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
坂口 末廣 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 教授 (60274635)
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研究分担者 |
千田 淳司 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (20437651)
原 英之 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (40469953)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プリオン / ソーチリン / ポストゴルジ輸送 / 神経変性 |
研究実績の概要 |
本研究では、プリオン病の治療法を開発することを目指し、プリオン病の病態メカニズムを解明するとともに、プリオン産生を抑制する化合物を同定する。申請者らは、プリオンが感染すると細胞膜蛋白質のポストゴルジ小胞輸送が障害され、その結果細胞膜蛋白質の細胞膜発現が低下し、それにより機能が障害され、細胞死が起こる可能性を報告した。また、プリオン病では蛋白質輸送関連分子ソーチリンが減少し、ソーチリンを介した蛋白質輸送が障害され、その結果プリオンの産生が増加しプリオン病が増悪すること、逆にソーチリンを過剰発現させるとプリオンの産生が抑制されることを報告した。本年度は、ポストゴルジ小胞輸送障害により細胞膜発現が低下するアトラクチンのトランスジェニック(Tg)マウスの系統化に成功した。現在、ポストゴルジ小胞輸送障害がプリオン病の病態に関与するのか検証するために、アトラクチンTgマウスへのプリオン感染実験の準備を進めている。また本年度、プリオン感染細胞では、ソーチリンがゴルジ装置よりもリソソーム分画に蓄積していることを明らかにした。この結果は、ソーチリンのゴルジ装置への逆輸送の障害がソーチリンの減少に関与することを示唆した。また申請者らは、ソーチリンの増強がプリオン病の病態改善につながるのか明らかにするために、ソーチリンTgマウスの作製を行った。その結果、2匹のファウンダーマウスを得ることに成功した。現在、これらのマウスについては、系統化を行っている。さらに申請者らは、プリオン感染細胞のプリオンを減少させる化合物を同定することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、プリオン病のポストゴルジ小胞輸送障害を改善すると、プリオン病の病態が改善するのか明らかにする。このために、ポストゴルジ小胞輸送障害を受けているアトラクチンとインスリン受容体のTgマウスを作製し、プリオンを感染させプリオン病の病態が改善されるのか検証する。本年度は、両者のTgマウスの系統化を行った。残念ながら、インスリン受容体Tgマウスは系統化できなかったが、アトラクチンTgマウスの系統化には成功した。従って、この研究は概ね順調に進行している。また本研究では、アトラクチンとインスリン受容体に結合する分子を同定し、プリオン病のポストゴルジ小胞輸送障害のメカニズムを明らかにする。本年度は、結合分子を同定することができなかった。従って、この研究に関しては順調といえない。また本研究では、ソーチリン減少による蛋白質輸送障害を改善するとプリオン病の病態が改善するのか明らかにする。このために、ソーチリンTgマウスを作製し、プリオンを感染させプリオン病の病態が改善されるのか検証する。本年度は、ソーチリンのTgマウスの作製を行い、その結果2匹のファウンダーマウスを得ることに成功した。従って、この研究は順調に進行している。また本研究では、プリオン病の治療法開発を目指し、プリオンを減少させる化合物を同定する。本年度は、プリオン感染細胞のプリオンを減少させる化合物の同定に成功した。従って、この研究は順調に進行している。また本研究では、プリオン感染細胞におけるソーチリンの減少メカニズムを明らかにする。本年度は、プリオン感染細胞において、ソーチリンがゴルジ装置よりもリソソームに蓄積していることを明らかにし、ソーチリンのゴルジ装置への逆輸送障害がソーチリンの減少に関与している可能性を示した。従って、この研究は概ね順調に進行している。以上により、総合的に、本研究は順調に進行していると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、プリオン病のポストゴルジ小胞輸送障害を改善すると、プリオン病の病態が改善するのか明らかにするために、ポストゴルジ小胞輸送障害を受けているアトラクチンとインスリン受容体のTgマウスを作製し、プリオンを感染させプリオン病の病態が改善されるのか検証する。今後、系統化に成功したアトラクチンTgマウスへのプリオン感染を行い、プリオン病の病態が改善されるのか検証する。また本研究では、アトラクチンとインスリン受容体に結合する分子を同定し、プリオン病のポストゴルジ小胞輸送障害のメカニズムを明らかにする。今後も、本年度に引き続き、結合分子の同定を精力的に行う。また今後は、プリオン感染細胞に細胞死を誘導するストレスを同定し、そのストレスとポストゴルジ小胞輸送障害の関連を明らかにし、ポストゴルジ小胞輸送障害のメカニズムの解明も行う。また本研究では、ソーチリン減少による蛋白質輸送障害を改善するとプリオン病の病態が改善するのか明らかにするために、ソーチリンTgマウスを作製し、プリオンを感染させプリオン病の病態が改善されるのか検証する。今後は、作製したソーチリンのTgマウスの系統化を行い、プリオンを感染させ、プリオン病が改善されるのか検証する。また本研究では、プリオン病の治療法を開発するために、プリオンを減少させる化合物を同定する。今後、同定に成功した化合物をマウスに投与し、プリオン病の治療薬として効果を有するのか調べる。また本研究では、プリオン感染細胞におけるソーチリンの減少メカニズムを明らかにする。今後は、ソーチリンのゴルジ装置への逆輸送障害に関与する分子を同定する。
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