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2021 年度 実績報告書

ALS2分子ネットワーク異常に着眼した上位運動ニューロン変性メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03551
研究機関東海大学

研究代表者

秦野 伸二  東海大学, 医学部, 教授 (60281375)

研究分担者 木村 啓志  東海大学, 工学部, 准教授 (40533625)
大友 麻子  東海大学, 医学部, 講師 (50535226)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード筋萎縮性側索硬化症 / 運動ニューロン / ALS2 / iPS細胞 / マイクロ流体デバイス
研究実績の概要

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位および下位運動ニューロンの選択的変性・脱落を特徴とする神経変性疾患である。近年、下位運動ニューロンの変性メカニズム研究が格段に進展しているなか、上位運動ニューロンに関する研究はほとんど進んでいない。これまで我々は、上位運動ニューロン優位に変性する家族性2型ALSに注目し、その原因遺伝子産物であるALS2分子ネットワーク機能を明らかにしてきた。さらに最近、ヒトiPS細胞から上位運動ニューロンの特徴を有する神経細胞の分化培養法の確立にも成功した。本研究は、これらの研究成果を発展させ、世界初となるヒト上位運動ニューロン変性モデルを作製し、ALS2分子ネットワーク異常を中軸にした細胞機能解析を行うことにより、ALS患者における上位運動ニューロン変性分子メカニズムの解明に挑むものである。本研究計画では、①ヒトiPS細胞の上位運動ニューロンへの分化誘導と長期培養法の確立、②マイクロ流体デバイスを用いたオルガネラ動態の時間空間的解析、③ALS2分子ネットワークを介したオルガネラ動態調節分子メカニズムの解析、の3つの研究テーマについて研究を進めている。研究3年目である令和3年度は、テーマ②および③についての成果が得られた。具体的には、新規マイクロ流体デバイスによるハイスループット軸索オルガネラ移送計測系の開発に成功するとともに、ALS2機能的複合体形成に必須なALS2天然変性領域を同定し、その天然変性領域がALS2高次複合体構造および細胞内動態と機能に必須な調節領域であることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では、以下の示す3つの研究テーマについての検討を進めている。本研究計画で掲げる3つのテーマについて以下に示す様な進捗状況であり、研究はほぼ順調に進捗している。
テーマ① ヒトiPS細胞の上位運動ニューロンへの分化誘導と長期培養法の確立:これまでに確立した手法を用いて、健常者、ALS2患者のiPS細胞から上位および下位運動ニューロン様神経細胞へ分化誘導および長期培養を安定的に可能にする条件の最適化を目指している。研究は順調に進捗しており、下位運動ニューロンについては再現性をもって安定した培養法が確立できている。上位運動ニューロンについては、より特異性の高い分化を可能にする数種の候補因子を特定し、分化制御への効果について検証を行っている。
テーマ② マイクロ流体デバイスを用いたオルガネラ動態の時間空間的解析:マイクロデバイス上でのヒトiPS細胞由来の運動ニューロン様神経細胞の最適化した分化・培養条件(ECMコーティング法、播種、軸索誘因制御)およびデバイス設計を用いて、ALSと健常者由来の下位運動ニューロンにおける軸索伸長速度の計測を繰り返し実施している。
テーマ③ ALS2分子ネットワークを介したオルガネラ動態調節分子メカニズムの解析:本研究課題では、1) ALS2分子複合体構造と細胞内でのALS2活性化の分子メカニズム解析と、2) ALS2結合分子群によるオルガネラ動態制御メカニズムの解析の2つの課題に取り組んでいる。特に、1)については、マウス脳内でのALS2複合体構造を明らかにし、さらに正常なALS2複合体形成に必須なALS2内の天然変性領域が重要であることを見出しており、観察技術開発と並行して研究は順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

本研究は、おおむね順調に進んでおり、研究計画の修正および変更の必要はない。従って、今後も当初の研究計画に従って3つの研究テーマに関する研究を遂行する計画である。
テーマ① ヒトiPS細胞の上位運動ニューロンへの分化誘導と長期培養法の確立:健常者、ALS2患者のiPS細胞から上位および下位運動ニューロン様神経細胞へ分化誘導する。特に、上位運動ニューロン様神経細胞の長期培養を安定的に可能にする条件をさらに再現性の高い条件設定を目指し、改良を加える。
テーマ② マイクロ流体デバイスを用いたオルガネラ動態の時間空間的解析:デバイス上でのヒトiPS細胞由来の運動ニューロン様神経細胞の最適化した分化・培養条件下で、疾患患者由来と健常者由来iPS細胞から分化誘導した下位運動ニューロンにおける軸索伸長能、軸索内酸性小胞およびミトコンドリア等のオルガネラ移送の定量的解析を行い、疾患特異的異常表現型を同定する。
テーマ③ ALS2分子ネットワークを介したオルガネラ動態調節分子メカニズムの解析:未だ未解決であるヒト上位運動ニューロン変性分子メカニズムを解明するため、ALS2の分子構造と活性との関連を解析するとともに、ALS2の上流因子と下流因子の全容とその制御系を、主に生化学的ならびに細胞生物学的手法を用いて分子レベルで明らかにする。また、これまでに明らかにされているRab5およびRab17を介するオートファジー・エンドリソソーム系、およびリサイクリング系調節に加え、Rab30、NEK1、およびC21orf2等のALS2結合因子に注目し、ALS2とミトコンドリア、ゴルジ体、一次繊毛、中心体との関連について分子レベルで明らかにする。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] High-throughput quantitative analysis of axonal transport in cultured neurons from SOD1H46R ALS mice by using a microfluidic device2022

    • 著者名/発表者名
      Otomo Asako、Ono Suzuka、Sato Kai、Mitsui Shun、Shimakura Kento、Kimura Hiroshi、Hadano Shinji
    • 雑誌名

      Neuroscience Research

      巻: 174 ページ: 46~52

    • DOI

      10.1016/j.neures.2021.07.005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The N-terminal intrinsically disordered region mediates intracellular localization and self-oligomerization of ALS22021

    • 著者名/発表者名
      Shimakura Kento、Sato Kai、Mitsui Shun、Ono Suzuka、Otomo Asako、Hadano Shinji
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 569 ページ: 106~111

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2021.06.095

    • 査読あり
  • [学会発表] 下位運動ニューロンと骨格筋の共培養による神経筋結合部の構築とその機能評価2022

    • 著者名/発表者名
      内藤佳津子、大友麻子、村松優作、西島恵子、木村啓志、秦野伸二
    • 学会等名
      東海大学マイクロ・ナノ啓発会【Tμne】第14回学術講演会
  • [学会発表] 効率的下位運動ニューロン分化誘導法を用いたALS細胞モデルの作出2022

    • 著者名/発表者名
      西島恵子、大友麻子、村松優作、木村啓志、石川充、秦野伸二
    • 学会等名
      東海大学マイクロ・ナノ啓発会【Tμne】第14回学術講演会
  • [学会発表] Structural architecture and cellular functions of juvenile motor neuron disease-causative gene product ALS2: implication of endosome maturation and endocytic recycling.2021

    • 著者名/発表者名
      Otomo, A., Ono, S., Sato, K., Mitsui, S. Shimakura, K., Fukuda, M., and Hadano, S.
    • 学会等名
      Keystone Symposia/eSymposia, Neurodegenerative Diseases: Genes, Mechanisms and Therapeutics
    • 国際学会
  • [学会発表] The intrinsically disordered region at the N-terminus of ALS2 acts as a determinant for the intracellular localization and oligomerization of ALS2.2021

    • 著者名/発表者名
      Shimakura, K., Sato, K., Mitsui, S., Ono, S., Otomo, A., and Hadano, S.
    • 学会等名
      PACTALS 2021 NAGOYA (Pan-Asian Consortium for Treatment and Research in ALS)
    • 国際学会
  • [学会発表] Neural cell-specific SQSTM1 deficiency exacerbates disease symptoms in a SOD1H46R-expressing ALS mouse model by regulating the formation and distribution of ubiquitin-positive aggregates in motor neurons.2021

    • 著者名/発表者名
      Mitsui, S., Otomo, A., Sato, K., Shimakura, K., Ishii, T., Yanagawa, T., Aoki, M., and Hadano, S.
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] The intrinsically disordered region at the N-terminus of ALS2 acts as a determinant for the intracellular localization and oligomerization of ALS22021

    • 著者名/発表者名
      Shimakura, K., Sato, K., Mitsui, S., Ono, S., Otomo, A., and Hadano, S.
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] ALS2 forms a unique homophilic complex in the central nervous system, whose molecular weight is higher than those in the peripheral tissues.2021

    • 著者名/発表者名
      Sato, K., Suzuki-Utsunomiya, K., Mitsui, S., Yudahira, H., Ono, S., Shimakura, K., Otomo, A., and Hadano, S.
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
  • [学会発表] 原始的な真核生物における形態変化に関与する分子の網羅的解析2021

    • 著者名/発表者名
      岡田-山口千沙、秦野伸二、荒木琢磨、佐々木亜由美、竹腰進、小濱一弘、金子堯子、中村彰男
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
  • [学会発表] ALS2の天然変性領域はALS2細胞内局在および多量体形成に影響する2021

    • 著者名/発表者名
      島倉健人、佐藤海、三井駿、小野鈴花、大友麻子、秦野伸二
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [備考] 東海大学医学部医学部医学科基礎医学系分子生命科学 分子神経病態科学研究室

    • URL

      http://mls.med.u-tokai.ac.jp/hadano/

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公開日: 2022-12-28  

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