研究課題
未曾有の超高齢社会、糖尿病治療薬の進歩、統合的多因子介入などにより、糖尿病に関連する腎病変の臨床病態は大きく変貌している。糖尿病性腎症(腎症)は新規透析導入、慢性透析患者のいずれにおいても最大の原疾患である。そのため、超高齢社会を背景にし、多様化した腎症の予防、病態解明と克服が求められている。その病態解明とともに、腎症の病態に立脚し、予後などを反映する臨床的なバイオマーカー開発とその臨床応用も重要な視点である。これまで生体での意義が不明であったキラルアミノ酸が技術革新により分析可能となってきた。本研究では、本研究では、生命現象に必須なアミノ酸、ことにD体、L体を識別するキラルアミノ酸に注目する。これまでの国内外での研究は総アミノ酸が主として対象であった。そのため、D体、L体を識別するキラルアミノ酸、ことにD-アミノ酸の生理的、疾病での役割は未だ十分には解明されていない。これまでの研究において、腸内微生物由来のD-アミノ酸の急性腎障害の意義を確認してきた。さらに、D-セリンがヒト急性腎障害のバイオマーカーであることも報告してきた。臨床的には、腎生検、血液検体が揃い、40年超の長期予後が追える腎生検による腎症コホートを有し、バイオマーカーとしての開発・検証が可能である。本研究では、生命活動に必須なアミノ酸、ことにキラルアミノ酸に注目し、生体での生理的意義、キラルアミノ酸を介した腎症の病態解明、新規バイオマーカー開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、生理的状態並びに腎臓病、ことに腎症に関連する新たなバイオマーカーの開発を進めることである。キラルアミノ酸はこれまで高感度の測定技術がなく、ヒトでの動態、役割は未だ不明であった。申請者らはこれまで、D-セリンがヒト急性腎障害のバイオマーカーであることを見出した。本研究では、D-、L-アミノ酸を区別し、かつ網羅的に解析可能なキラルアミノ酸メタボロミクスを用い、キラルアミノ酸解析をしている。本年度は本趣旨のもと、検討を行った。本研究課題の進捗状況としては概ね順調に展開していると考えている。
今後も、キラルアミノ酸を通じた病態解明、非侵襲的かつ早期診断、治療、予後を反映するキラルアミノ酸の病態解明と新規バイオマーカーとして臨床への還元を目指して研究を遂行する。サンプルを用いて、キラルアミノ酸分析を行い、臨床的意義を明らかにし、バイオマーカー開発につなげる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 図書 (1件)
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