研究課題
消化管の協調的運動(蠕動など)は、一般には神経活動が造り出すと考えられることが多い。しかし実際の興奮連携は極めて滑らかであり、また様々な状況に対応し多様な変化を呈する。その根底にあるのは、筋・神経・間質細胞に加え、粘膜からの腸ホルモンや免疫系の細胞群がある。そこで本研究課題では、消化管組織の興奮連携を可視化して過敏性および炎症性反応時の時間空間的挙動特性を解明する。当該年度は、「その前年度におけるコロナ禍とそれ以外の不測の事態により炎症性反応についての可視化実験の遅れ」を回復すべく、別の方法などで代用して研究を進めた。また、過敏性による反応の可視化とその解析作業を積極的に進め十分な成果を得た。具体的には、腸内細菌叢に関連するトリプトファン代謝物質による、時空間連携効果の差異を検出することができた。さらに当該年度は、結腸の部位別(近位部と遠位部)に特徴的な時空間連携を見いだすことができた。これは当初予測していなかった素晴らしい研究展開である。その時空間連携の様式や薬剤依存性などから、平滑筋・内在神経・ペースメーカ間質細胞間の連絡であることが示された。また、結腸のいろいろな部位では、近位部・遠位部の特徴が混合することが分かった。この特徴の違いは、過敏性(特に5-HTに関連)や炎症性の効果判定等の基礎情報として利用できる可能性がある。本研究成果を支えたのは、いろいろな部位においてCaの変化を比較できるレシオメトリック法を確立したこと、及び電気的に速い変化と緩徐な変化を広帯域に計測できる透析膜補強低インピーダンス微小電極アレイ法の技術開発であった。またデータ解析について進展もあった。電位マッピングや細胞内Caイメージングの解析に関して、興奮伝搬のパターン分類や縦横の活動性を分解して評価するなど、事象を定量的に判断できるAI機械学習プログラム等の作成方法が具体的に進行している。
2: おおむね順調に進展している
当該前年度におけるコロナ禍とそれ以外の不測の事態により遅れが認められた炎症性反応の可視化実験の遅れを、代替する方法で実験を進めたので。さらに当該年度では、「結腸の部位別(近位部と遠位部)に特徴的な時空間連携を見いだした」という、当初予測していなかった素晴らしい研究展開を得たので。またデータ解析についても「電位マッピングや細胞内Caイメージングの解析に関して定量的に判断できるAI機械学習プログラムの作成方法の具体化」という特筆できる進展が得られたので。以上の理由から、当初の予測されていなかった成果も加わり、全体として当初の予想のように概ね進行していたと評価できる。
コロナ禍やそれ以外の不測の事態に関して、ある程度の予想の範囲内として対応できる研究プラン(特に炎症性関連部分)の準備・代替などを検討しておく。炎症が関与する細菌叢関連物質の作用などを積極的に進める。新たに見いだされた「結腸の部位別(近位部と遠位部)に特徴的な時空間連携」を加味して、小腸、結腸などいろいろな消化管部位での特徴理解に役立てる。当初の予想通りに進展している過敏性、特に5-HTの時空間連携作用効果などを詳しく解析し、複数のトピックとして研究発表や論文にまとめる作業を行う。具体化した「電位マッピングや細胞内Caイメージングの解析に関する、AI機械学習プログラムによる定量的評価法」を積極的に進め、これまでの研究結果へと組み込んでゆく。解析法を確立し、関連する消化管運動解析などにも役立てる。
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