研究課題/領域番号 |
19H03560
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依田 成玄 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (70335454)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
分子標的薬をはじめとするがんに対する新規治療薬が次々に開発されている。しかしながら、初期治療が有効であっても、多くのがんにおいて耐性が生じ、このことが患者死亡の大きな原因となっている。治療抵抗性の難治性がんの研究は数多くされているが、未だ多くのケースにおいてその分子メカニズムは不明である。治療抵抗性のメカニズムの解明および新たな治療標的分子の同定のための新しい研究アプローチの開発が強く期待されている。 MLL遺伝子転座を伴う急性骨髄性白血病(MLL-AML)は強い抗がん剤を用いた治療や骨髄移植をおこなっても再発しやすい治療抵抗性を示し、予後は不良である。MLL-AMLの治療抵抗性メカニズムの解明および新たな治療標的分子の同定が強く期待されている。申請者らは治療抵抗性を獲得したMLL-AMLモデルマウスを作成し、白血病細胞のゲノム解析により、新規遺伝子変異GNB2 G77Rを同定した。GNBは、3量体Gタンパク質のβサブユニットであり、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の下流で機能するシグナル分子である。本研究では、MLL-AMLマウスおよびGNB遺伝子をモデルとして利用し、難治性がんに対する新規の診断法・治療法の開発システムを構築する。 本研究では、治療抵抗性におけるGNBの変異や高発現について機能的な解析を行うとともに、GNBタンパク質をターゲットとした治療薬の開発を行う。これまでに、GNB変異を有する患者由来患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts)を樹立し、このモデルを用いた薬理実験より治療薬候補の同定を行うなどの成果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに以下の解析を実施している。 ・GNBの相互作用分子の同定:GNBと関連する分子の新規会合分子を同定するために、免疫沈降及び質量分析実験を行った。GNB関連分子と結合する分子の同定に成功した。 ・GNBの下流シグナルの同定:GNBの下流で活性化しているシグナルを同定するためにリン酸化プロテオミクスによるキナーゼ基質の解析を行っている。GNBと関連する分子について、その分子及び結合分子のタンパク質リン酸化動態を質量分析により同定した。得られたリン酸化タンパク質の一部は、リン酸化特異的抗体が入手可能でありこれを利用してリン酸レベルの確認を行った。 ・GNBを標的とする阻害剤の探索:GNBと関連する分子に関して、その分子を直接またはそのシグナル経路の阻害剤が利用可能かどうか検討を行っている。GNB変異を有する患者由来患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts)を樹立し、治療薬候補の同定を行う目的でこのモデルを用いた薬理実験を実施した。このモデル細胞の増殖を特異的に抑制するかどうか調べるとともに、標的分子の活性が抑制されているかどうかをリン酸化抗体を用いたウエスタンブロットにより検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き以下の解析を継続する。 ・GNBの相互作用分子の同定:GNBと関連する分子の新規会合分子を同定するために、免疫沈降及び質量分析実験を行った。GNB関連分子と結合する分子の同定に成功したが、得られた結合分子について免疫沈降やウエスタンブロット法により確認する。 ・GNBの下流シグナルの同定:GNBの下流で活性化しているシグナルを同定するためにリン酸化プロテオミクスによるキナーゼ基質の解析を行っている。GNBと関連する分子について、その分子及び結合分子のタンパク質リン酸化動態を質量分析により同定した。得られたリン酸化タンパク質について、リン酸化特異的抗体などを利用してリン酸レベルの確認を行う。 ・GNBを標的とする阻害剤の探索:目的によって同定された標的分子に関して、その分子を直接またはそのシグナル経路の阻害剤が利用可能かどうか検討する。利用可能であれば、GNB変異体によってトランスフォームした細胞の増殖を特異的に抑制するかどうか調べるとともに、標的分子の活性が抑制されているかどうかをリン酸化抗体を用いたウエスタンブロットにより検討する。
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