研究課題/領域番号 |
19H03563
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
末廣 寛 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40290978)
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研究分担者 |
山崎 隆弘 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00304478)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 便DNA検査 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
我が国において、がん罹患数で最も多いのは大腸がんであり、大腸がんによる死亡数は第2位と上位を占める。大腸がんは腺腫段階(ステージ0大腸がんも含む)までの切除により、将来の大腸がん発生が最大90%抑制され、また大腸がん死亡率も50%低減することが報告されていることから、早期発見・早期治療が非常に重要である。大腸がんの多くは「腺腫→早期がん→進行がん」の経過をたどるが、現行の大腸がんスクリーニング検査である便潜血検査の検査感度は、進行がんでは高いものの、進行腺腫(1cm以上の腺腫やステージ0がん)では30%前後と低いことが問題である。この問題を解決するために、本研究者らは大腸腫瘍マーカーであるメチル化TWIST1を世界で初めて発見し、1コピーのメチル化TWIST1をも検出可能な超高感度メチル化解析法を開発している。 本研究は、この「超高感度メチル化解析法による便DNA検査」と「便潜血検査」併用による大腸腫瘍スクリーニング性能(検査感度・特異度)の検証が目的である。なお、これまでに、便潜血検査のみでは検出が難しい平坦型発育腫瘍についても、便DNA検査を併用することにより検出力が向上することを見出している。本検査は臨床検査としての有用性が示唆されるが、実際に使用するには採便後の便DNAの安定性を確保する必要があり、便DNA保存液での実証試験が必要であった。そこで2020年度はこの点について検証した。研究実績については「現在までの進捗状況」に記載の通りであり、便DNA検査に便保存液の使用が可能であることが分かった。本研究は大腸がんの早期発見・早期治療につながり、国民の大腸がん死亡率減少に貢献する可能性が極めて高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【材料および方法】コントロール47名、非進行腺腫患者21名、進行腺腫患者10名を対象とした。採便後、便検体を便DNA検査用保存液中に入れた。同時に便潜血検査用保存液にも便検体を入れた。便DNA検査については、被験者の便検体からDNAを抽出し、複数のメチル化感受性制限酵素処理後、デジタルPCRによりTWIST1メチル化レベルを測定した。便潜血検査についてはヘモグロビン濃度を測定した。 【結果】コントロール群、非進行腺腫群に比べて、進行腺腫群において便中TWIST1メチル化レベルの上昇を認めた。Receiver operating characteristic curve によりTWIST1メチル化レベルのカットオフを設定した。また、便潜血検査のカットオフ値については対策型検診同様100 ng/mLとした。進行腺腫に対する検査感度は、便潜血検査単独、および、便DNA検査単独、それぞれ30%であった。便潜血検査と便DNA検査の併用により検査感度は50%にまで向上した。 【考察】今回検討した便DNA検査用保存液が大腸腫瘍スクリーニング目的の便DNA検査に利用可能であることが分かった。さらに、便DNA検査用保存液を使用した便DNA検査により進行腺腫の診断性能が向上する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今回検討した便DNA検査用保存液が大腸腫瘍スクリーニング目的の便DNA検査に利用可能であることが分かった。引き続き症例数を増やして「便DNA検査」と「便潜血検査」併用による大腸腫瘍スクリーニング性能(検査感度・特異度)を検証する予定である。
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