研究課題
HDLS (hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid)/ALSP (adult-onset leukoencephalopathy with spheroids and pigmented glia)は代表的な一次性ミクログリア病であり,大脳白質を病変の主座とする成人発症の大脳白質変性症である。本研究課題では,ミクログリアの本質的な機能破綻を原因とする「一次性ミクログリア病」に着目して研究を進めた。HDLS/ALSPはミクログリアの分化および機能維持を調節する鍵分子であるCSF1Rの遺伝子変異を原因とする。申請者は,CSF1R変異を伴うHDLS/ALSP多数例の解析により,HDLS/ALSPにおける臨床・画像的特徴を明らかにするとともに,ミクログリア異常を示唆する様々な知見を明らかにしてきた。本研究課題ではHDLS/ALSPで生じるCSF1R異常を介したミクログリア機能破綻を培養細胞,剖検脳,患者由来生体試料を用い多面的なアプローチを行った。CSF1Rを導入した培養HEK293細胞におけるCSF1R自己リン酸化依存性シグナル伝達は,変異型CSF1Rでは消失していた。一方,非病原性バリアントCSF1Rのキナーゼ活性は野生型と変わらなかった。さらにCSF1Rキナーゼ活性の程度とALSP/HDLSの表現型には有意な相関があることをみいだした。また,CSF1R変異のドミナントネガティブ効果を検証し,変異型CSF1Rは野生型のキナーゼ活性に影響を及ぼさないことを明らかにし,その可能性が低いことを示した。HDLS/ALSP患者脳におけるミクログリアは特徴的な形態変化を示し,機能不全が生じている知見が得られた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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