研究課題
神経核内封入体病 (Neuronal intranuclear inclusion disease : NIID)症例を収集するため、学会発表、書籍などを通じて、疾患概念および皮膚生検の有用性の啓発を行いながら、NIIDが臨床的に疑われる患者に対し、皮膚生検を行い、NIID病理診断例、特に家系例を蓄積し、自然歴を含めた病態を詳しく検討した。NIIDの原因遺伝子がNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長であることが明らかとなったことから、現在、我々が保有しているNIID患者コホートにおいて、DNAサンプルが採取されている症例について、NOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長の有無を検討し、臨床像、病理像とNOTCH2NLC遺伝子の変異のGGCリピート配列の延長との関連を検討している。さらに、皮膚生検およびNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長の双方からNIIDと診断し、経過観察していた患者の剖検を得ることができたため、現在、詳細な病理学的検討を行っている。RNA seq の結果から、NOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長に伴って、異常なRNAが合成されることが明らかとなっていることから、転写されうる異常なタンパクを同定し、それに対する特異抗体を作成し、現在検討を進めている。さらに、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピートが延長することによって、核内封入体が形成されるまでの過程の解明、その構成タンパク質の解析など、NIIDの分子生物学的な病態の解明、さらには根本的な治療法の開発につながる研究を推進している。
2: おおむね順調に進展している
我々は、昨年度までの研究成果として、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート配列が、NIIDの原因遺伝子であることを明らかにし発表した。さらに、RNA seq の結果から、NOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長に伴って、異常なRNAが合成されることが明らかとなっていることから、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート配列の異常延長によって転写されうる異常なタンパクを推定し、それに対する特異抗体を作成した。現在、剖検組織を用いた免疫染色、およびウエスタンブロット 等の分子生物学的な手法を用いて、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート配列によりもたらされる、異常なタンパク質の転写、分布、および核内封入体の形成過程についての解析を進めている。さらに、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピート配列により、ポリグリシン鎖が転写されることについては、フランスの IGBMCと共同研究を行い、マウスモデルでの発現状況について検討を行い、論文で発表した。
NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピートが延長することによって、NIIDがどのようにして発症するのか、その過程を分子生物学的に解明する。GGCリピートを延長させたNOTCH2NLC遺伝子を発現する培養細胞モデルを作出し、その遺伝子産物の生理学的な機能の解析、結合蛋白の解析、細胞活性に与える影響を検討する。さらに、リピート延長によって起こる病態、核内封入体の形成過程の解明、タンパク質発現の検討など、NIIDの病態解明、治療法の開発につながる研究を推進する。また、GGCリピート延長により発現する異常なタンパク質に対する特異抗体を用いて、核内封入体の構成成分の同定、さらに細胞内での分布、動態について、病理組織標本および初代線維芽細胞、ウエスタンブロット 等を用いて検討する。加えて、NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピートを発現する動物モデルを作出し、NIIDの病態が再現可能か検討し、再現できた場合には、治療法の開発を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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