研究課題
統合失調症の進行性脳病態仮説により、発症前後の初発統合失調症および統合失調症ハイリスク群(Early clinical staging of schizophrenia, ECS)に対するバイオマーカー開発が試みられたが、いまだ臨床応用に至るものはない。本研究の目的は、応募者らが設立・運営するアジア精神病MRI研究コンソーシアム(ACMP)により、ECSを中心とした大規模マルチモダリティ脳画像データを集積する。疾患共通性・特異性に着目した生物学的要因を検討しつつ、大規模データを生かした機械学習により、臨床応用可能なバイオマーカー開発を目指す。10,000計測を超えるMRIデータ量を取り扱う解析・機械学習パイプラインを備え、効率的な前処理・解析分担の仕組みを作る。病態解明、バイオマーカー開発だけでなく、臨床現場で実施可能な必要計測手法の提案を行う。一連の研究成果により、アジアの精神疾患脳画像研究拠点を構築することを目指す。2019年度、小池はACMP運営基本方針の決定を各国と協議の上決定し、参画機関に周知、さらなる参画機関への案内を行った。MRIデータ集積から前処理まで行うパイプライン方針を策定し、構築を開始した。先だって、NIRSによる脳機能画像1000計測を超えるデータセットと臨床データの融合的解析プラットフォームを構築し、論文投稿した。笹林は、ACMP参画機関として情報共有を行い、ACMP解析パイプライン構築支援を行なった。また、国内施設から収集した既存データのQCを進めた。平野は、ハーバード大学との国際共同研究で、初発統合失調症患者における進行性のガンマオシレーション異常を認めることを見出し論文投稿し、脳波を用いたECSの機能的バイオマーカーの開発および構築を進めている。また、統合失調症の言語処理機能異常に関する網羅的レビューを投稿した。
3: やや遅れている
小池は、2019年8月に開催のBESETO Conference@Seoulにて、ソウル大学、北京大学とACMP運営について意見交換を行い、基本戦略について合意した。また、International Brain Research Organization Conference@Daegu, South Korea、Taiwanese Society of Schizophrenia Research Conference@Taichung, Taiwanにて、ACMP参画機関に案内周知を行った。大規模MRIデータ解析系の立ち上げに先立ち、脳機能計測NIRSデータを用いた1,000計測を超える大規模脳画像データと臨床データの融合的解析プラットフォームを立ち上げ、論文投稿した。笹林は、大規模脳画像解析に先立ち、新規的な脳構造指標(海馬/脳幹亜領域体積など)の臨床的有用性を探るべく、自施設データを用いた予備的な解析を開始した。平野は、2019年10月に開催のAsCNPにて、UNSW Sydney、国立台湾大学、ソウル大学の脳波研究チームとのシンポジウムを行い、今後の共同研究計画についての意見交換と方針についての話し合いを行った。また、臨床脳波を用いた国内の共同研究に関する意見交換と準備およびデータのQC、被験者評価を行った。
2019年後半より顕在化した新型コロナウイルス感染症拡大の影響が中国をはじめとしたアジア諸国に認められており、ACMPの進捗遅れが懸念される。そのため、既存の思春期コホートデータ、国内多施設共同研究プロジェクトのデータの解析をまず進め、そのうえで遅れて集積されるACMPデータを上乗せできる形で研究推進戦略を修正する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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