研究実績の概要 |
本年度は、まず統合失調症で変化の認められるPVニューロンおよびSSTニューロンの選択的マーカーであるPV mRNAおよびSST mRNAの発現とMOR mRNAの発現の相関関係を、対照者および統合失調症患者において評価した。その結果MORとPV mRNAの間には、対照者(r = 0.09, p = 0.583) および統合失調症患者(r = -0.02)で有意な相関は検出できなかった。一方、MORとSST mRNAの発現には、対照者(r = -0.17, p = 0.289)で有意な相関は無かったが、統合失調症患者では有意な負の相関が検出された(r = -0.41, p = 0.009)。次に、MORの発現変化と錐体ニューロンの変化の関係を調べるために、統合失調症の前頭前野で報告されている錐体ニューロンの樹状突起スパインの減少に関与すると考えられるアクチン重合を担うARPC3, ARPC4, CDC42に注目し、背外側前頭前野において、統合失調症患者おける発現変化を調べた。解析には20組の性別が同じで、年齢や死後経過時間や脳組織の状態が近い統合失調症患者と健常対照者を用いた。その結果、ARPC4及びCDC42に有意な発現変化が検出された。対照者と比べ統合失調症では、ARPC4の発現は5.8%(F1,32 = 4.57, p = 0.040)低下しており、CDC42の発現は12.4%(F1,32 = 11.03, p = 0.002)低下していた。一方ARPC3の発現には変化が検出できなかった(F1,32 = 0.15, p = 0.903)。さらに、MROと ARPC4およびCDC42の発現変化との関係を調べるために、相関関係を調べた。その結果MORとARPC4については、有意な負の相関が対照者(r = -0.62, p = 0.003)および統合失調症患者(r = -0.46, p = 0.012)に検出され、MORとCDC42については統合失調症患者で有意な負の相関が(r = -0.542, p = 0.014)が検出された。
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