研究課題/領域番号 |
19H03582
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (20362189)
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研究分担者 |
原 武史 岐阜大学, 工学部, 教授 (10283285)
岩渕 俊樹 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (20711518)
奥村 明美 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (40767943)
西村 倫子 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任講師 (30773791)
原田 妙子 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (60525963)
桑原 斉 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50456117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 注意欠如多動症 / 出生コホート |
研究実績の概要 |
今年度は,自閉スペクトラム症(ASD)とASDに至る中間表現型としての神経発達の軌跡に共通して関連する変数に注目して研究を進めた。 ASDでは遺伝学的要因,とくに複数のcommon variantが組み合わされて発症に寄与するものと考えられている。一方,ASD児・者は発達早期に言語機能や運動機能,社会認知機能などのさまざまな領域に神経学的な発達遅延が認められ,これらはASDの早期徴候・早期診断マーカとみなされることもある。本研究では,我が国ですべての児に健康診査をおこなう1歳6か月時の神経学的発達をASDの中間表現型ととらえ,これとASDの表現型とに共通した遺伝学的背景があるかどうかを検討した。 まず,浜松母と子の出生コホート研究に参加した876名の8~9歳児を対象に,遺伝子サンプルを収集し約650 万箇所の遺伝子の変化からASDのpolygenic risk score(PRS)を計算して,個々人のASDに対する遺伝学的関連の強さを定量化した。ついで,全児のASD特性(診断との関連の強さ)をAutistic Diagnostic Observation Schedule-2(ADOS-2)で評価,1 歳6 ヶ月時の神経学的発達はMullen Scale of Composite for Early Learning(MSEL)により粗大運動、微細運動、受容言語、表出言語、視覚受容の5 つの領域ごとに評価した。 その結果,ASDのPRSはADOS-2と強い関連を示しただけでなく,MSELの粗大運動および受容言語の領域得点と強い関連を示した。以上より,ASDの遺伝学的リスクを有すると,日本の一般集団においもASDの診断に至る可能性が高く,また,1歳6か月での運動発達遅延,言語発達遅延が観察される可能性が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遺伝因子の寄与について論文発表に結び付く成果が1年目から得られたことは想定以上の進捗であった。多数の遺伝因子をPRSに集約させられることがわかったことは,今後のASDさらにADHDを理解するモデルの確立を促進するものである。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はADHDの背景としての遺伝因子及び環境因子としての低出生体重に焦点を当てて検討を進める。
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