研究実績の概要 |
・iPS細胞の作成・培養:当研究室で作成したAD/HD患者由来のiPS細胞を培養した。健常者由来のiPS細胞は理化学研究所バイオリソース研究センターから提供を受けた細胞を使用した。いずれの細胞も、培養を維持し実験に必要な数を得ることに成功した。 ・iPS細胞からドーパミン神経細胞への分化誘導:先行研究で報告された方法を用い、健常者およびAD/HD患者由来の細胞をドーパミン神経細胞に分化誘導した。健常者およびAD/HD患者由来のドーパミン神経細胞ではドーパミン取り込み能に違いがあることを示唆する結果を得たが、十分な試行回数を得られておらず、今後更なる検証が必要と考えられた。 ・iPS細胞から大脳皮質様組織への分化誘導:先行研究で報告されたSFEBq法を用い、健常者およびAD/HD患者由来の細胞から大脳皮質様組織に分化誘導することに成功した。免疫染色を用いた解析を行い、発生初期の大脳皮質に相当する構造のうち、層構造の厚さ、層に含まれる神経細胞数に有意な差があることを見出した。この形態的な変化を生じる原因について検証し、細胞分裂とアポトーシスの数、自己増殖と分化の割合にも、健常由来とADHD由来の細胞とで有意な差があることを見出した。この結果は、AD/HD者では大脳皮質の発生に変化が生じていることを示唆するものであると考えられる。この成果を論文として発表した(Zhang, Eguchi, Sora et al., Telencephalon Organoids Derived from an Individual with ADHD Show Altered Neurodevelopment of Early Cortical Layer Structure. Stem Cell Rev Rep. 2023. PMID: 36872412)。
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