研究課題/領域番号 |
19H03585
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
数井 裕光 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30346217)
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研究分担者 |
井上 啓史 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00294827)
上羽 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
山上 卓士 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (10257537)
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (20305022)
古谷 博和 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (60253415)
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水頭症 / シャント術 / 認知症 / 併存 / 長期予後 |
研究実績の概要 |
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、高齢者の認知症の原因疾患の一つであるが、地域在住高齢者の1%と高頻度に存在し、かつシャント術で認知症が治療可能な病態である。 本研究では、クモ膜下腔が不均衡に拡大するDESH型のiNPHを対象にシャント術実施2年後の状態を評価し、よい状態が続く条件は何かを、iNPH以外の3大認知症、すなわちアルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)、レビー小体型認知症(DLB)の併存の有無の観点を含めて検討する。 さらにアルツハイマー病が併存しているiNPH患者に対しては、シャント術による脳内アミロイドの排泄と治療効果との関係も調べる。 本研究は二段階の症例登録を採用しており、高知大学病院と高知市内の共同研究施設を受診したiNPH患者13例を仮登録した。その後、脳脊髄液(CSF)排除試験を実施し、症状の改善を認めたprobable iNPH10例(男/女:5/5、平均年齢77.2±3.9歳)を本登録した。この10例の登録時データは、iNPHグレーディングスケールの評価で、歩行2.3±0.5、認知2.4±0.5、排尿2.0±1.2、modified Rankin scaleによる生活自立度評価は2.3±0.8であった。 またMMSE 22.0±4.1、FAB 11.6±3.1、Timed Up and Go test 27.8±30.1秒であった。他疾患の併存については、ADの併存をCSF中のリン酸化タウ蛋白値で判定したところ全例でADの併存は認めなかった。またDLBの併存をイオフルパンSPECT検査、または心臓交感神経シンチグラフィーで判定したところ3例(1例は未実施のため9例中)でDLBの併存が示唆される結果となった。脳血管障害については、Fazekasの白質病変スケールでPVHとDWMHがともに2.5±1.1であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の本研究に対する高知大学附属病院の倫理委員会での承認、研究遂行のために必要な各診療科とのデータ収集手順の整備、MRIでPADREが撮影可能にするための準備などに時間を要した。 また2020年初頭からは新型コロナウィルス感染症が高知県で全国に先駆けて蔓延しはじめたため、iNPH患者の紹介患者が激減した。 さらに長時間の認知機能検査、および臨床評価を実施しないようにとの関連学会からの声明があり、データ収集が困難になった。 またiNPH患者に対するシャント術は機能予後を改善させるための手術であり、生命予後を改善させるための手術では無いため、高知大学脳神経外科におけるシャント術の実施が休止となった。 これらのために症例登録が非常に制限された。またこれと並行して2020年2月に導入予定であった神経画像解析用の高性能パーソナルコンピューターの納期が、受注集中のため2ヶ月程度遅れ、研究を延期する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の蔓延の状況を考慮しながら、可能な限り、安全に臨床評価を行い、入院制限のある中でもiNPH患者の症例登録を実施していく。 また高知大学脳神経外科でのシャント術が休止している間は、高知県内でシャント術を実施している施設にシャント術の実施を依頼して、その後の評価は当科で実施する共同研究体制を構築していく。
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