研究課題/領域番号 |
19H03585
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
数井 裕光 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (30346217)
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研究分担者 |
井上 啓史 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00294827)
上羽 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00314203)
山上 卓士 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (10257537)
米田 哲也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (20305022)
古谷 博和 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (60253415)
齊藤 源顕 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (60273893)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水頭症 / シャント術 / 認知症 / 併存 / 長期予後 |
研究実績の概要 |
今年度は新たに19例のiNPH例を仮登録し、脳脊髄液(CSF)排除試験で陽性となった14例を本登録した。 これにより本登録症例は37例(男/女:18/19、78.3±5.7歳)となった。 この37例の登録時データをまとめると、iNPHグレーディングスケール(iNPHGS)は、歩行1.9±0.7、認知2.1±0.8、排尿1.5±1.1、modified Rankin scale(mRS)は2.1±0.8であった。またMMSE 22.5±3.6、FAB 11.0±2.5、Timed Up and Go test(TUG)初回値19.6±17.1秒、最速値14.6±8.8秒であった。他疾患の併存については、ADの併存をCSF中のリン酸化タウ蛋白値で判定したところ併存が示唆されたのは2例であった。またDLBの併存をイオフルパンSPECT検査、または心臓交感神経シンチグラフィーで判定したところ13例(2例は未実施のため35例中)でDLBの併存が示唆された。脳血管障害については、Fazekasの白質病変スケールでPVH2.2±1.1、DWMH2.3±1.0であった。 本登録した症例中18例に対して圧可変式バルブを用いたシャント術が実施された。17例は脳室-腹腔シャント術で、1例は腰部クモ膜下腔-腹腔シャント術であった。 この18例中、ADの併存が1例に、DLBの併存が5例に示唆されたが、シャント術前とシャント術3ヶ月後(3名は未実施)のデータを比較すると、iNPHGSの歩行が2.2±0.5から1.2±1.1に、認知 2.1±0.6から1.7±0.9に、排尿 2.0±1.1から1.6±1.2に、mRS 2.3±0.8から1.9±1.0に、MMSE 23.0±4.0から24.9±3.2に、TUG初回値49.7±15.4秒から20.2秒±18.8に改善していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度になっても、高知県における新型コロナウイルス感染症は収束せず、外来患者、入院患者はともに減少したままであった。 また一定時間を要する認知機能検査、および臨床評価を実施しないようにとの関連学会からの声明が継続され、データ収集が困難な状況が続いた。さらにiNPH例に対するシャント術は機能予後を改善させるための手術であり、生命予後を改善させるための手術では無いため、脳神経外科におけるシャント術の実施も時に制限されることがあった。 これらの理由のために症例登録が制限された状況が続いた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、DESH型のiNPH疑い症例を仮登録し、CSF排除試験を実施し、3徴に改善を認めた症例を本登録するという手順を継続する。 そしてシャント術を実施した症例については、シャント術施行後3,6,12,24ヶ月の時点の臨床評価を継続し、シャント術後の長期経過を明らかにする。またCSF中のリン酸化タウ蛋白値、脳血流シンチグラフィー検査結果、イオフルパンSPECT検査結果、心臓交感神経シンチグラフィー結果、頭部MR画像における白質病変とシャント術効果との関連を検討し、さらにシャント術後の良好な予後を予測するための因子を探索する。またiNPHの頭部MR画像や脳血流シンチグラフィーデータを活用して、iNPHの3徴、および頻度の多いアパシーなどの臨床症状と関連する脳領域を同定する。 これによりiNPHの症状の脳内基盤が明らかになる。
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