研究課題/領域番号 |
19H03586
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
明智 龍男 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80281682)
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研究分担者 |
山口 拓洋 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50313101)
内富 庸介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 部門長 (60243565)
古川 壽亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (90275123)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん / 抑うつ / 不安 / 精神療法 / スマートフォン / 臨床試験システム |
研究実績の概要 |
がんはわが国の死因の第一位であり、年間100万人以上が罹患する最大の健康問題である。その致死性のため、患者の30-40%に不安、抑うつがみられる。がん患者の不安、抑うつに対しては薬物療法と認知行動療法を代表とする精神療法双方の有用性が示されているが、患者の大多数は精神療法を好む。一方、莫大な患者数に対し治療者の不足のため、適切な精神療法はほとんど提供されていない。以上のような背景を受け、本研究では、情報通信技術を駆使した革新的な臨床試験体制を構築するとともに、広くがん患者の不安、抑うつに対するこれらアプリの有効性を無作為化比較試験で検証することを目的とする。 2020年度までに以下を実施した。スマートフォンを用いた問題解決療法の治療プログラム(「解決アプリ」)および行動活性化に基づく治療プログラム(「元気アプリ」)を開発し、本研究に即した形に改良した。我々が他の研究で開発した臨床試験システムをもとに(特願2019-017498)、対象者の募集、説明と同意、評価項目の入力等のほぼすべての研究プロセスをインターネットをはじめとした情報通信技術を介して行う臨床試験体制を本研究に即した形で構築した。これにより、臨床試験参加に対する患者の来院負担、医療者の参加者リクルートに関する説明および同意取得等の負担を軽減することが可能となった。そのために研究概要の説明のためのホームページ、同意取得のためのelectronic Informed Consent、自動割付プログラム、評価項目を患者自身のスマートフォンから入力可能とするelectric patient reported outcomeなどを含んだelectronic data capturing (EDC) systemを構築した。 2020年度はシステムのチェックのための予備試験を行った後に臨床試験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、これまでに世界に先駆け、費用対効果および携帯性のすぐれた介入としてスマートフォンを用いた問題解決療法の治療プログラム(「解決アプリ」)および行動活性化に基づく治療プログラム(「元気アプリ」)を開発してきた。「解決アプリ」は問題解決技法の5つのステップ(Step 1:問題を整理し明らかにする、Step 2: 目標を具体的にする、Step 3: 解決方法を考える、Step 4:よりよい解決方法を選ぶ、Step 5: 解決方法を実行し、結果を評価する)から構成される。『元気アプリ』は、行わなくなった行動に気づき再挑戦するセッションと新たな行動に挑戦するセッションから構成される2セッションから構成されている。2019年度中に「解決アプリ」「元気アプリ」をがん患者を対象とする本研究に即した形に改良した。 加えて、我々が他の研究で開発した臨床試験システムをもとに、対象者の募集、説明と同意、評価項目の入力等のほぼすべての研究プロセスをインターネットをはじめとした情報通信技術を介して行う臨床試験体制を本研究に即した形で構築した。これにより、臨床試験参加に対する患者の来院負担、医療者の参加者リクルートに関する説明および同意取得等の負担を軽減することが可能となった。そのために研究概要の説明のためのホームページ、同意取得のためのelectronic Informed Consent、自動割付プログラム、評価項目を患者自身のスマートフォンから入力可能とするelectric patient reported outcomeなどを含んだelectronic data capturing (EDC) systemを構築した。本研究に際して当該医療機関の倫理委員会で承認を得た。 2020年度はシステムのチェックのための予備試験を行った後に臨床試験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本臨床試験の対象者は、再発のない若年(50歳未満)の乳がんのサバイバーとし、主要評価項目は、身体疾患患者の不安、抑うつの評価方法であり、日本語版が標準化されているHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)得点の推移(第0-2-4-8週)の傾きとしている。 臨床試験体制の確立、維持のために、看護師資格を有したクリニカル・リサーチコーディネーター(CRC)を雇用し、臨床試験への参加申し込みをした対象患者の管理などを行える体制を構築した。同時に臨床試験の実施手順書を作成した。手順書に関しては適宜改訂を重ねていく。 本研究の場合、臨床試験の情報を多くの潜在的な対象者に広報する必要があるため、効果的なリクルートのための方略を策定し、医療機関への研究紹介のポスターの貼付、患者会などへの協力依頼、フェイスブックなどSNSの利用などを行っている。しかし、対象者のリクルートが思うように進まないため、インターネット広告や最近増えている各種学会における患者用ブースなどにおける広報なども実施した。しかし、それでも2020年度には30名の症例集積を目標としたが、最終的には10名に満たなかった(目標症例数は計199例)。本研究に関しては新聞の取材なども受けたが、予想に反し、エントリーに対してはあまり効果がみられなかった。当事者への聞き取りから、担当医からの直接の研究の推奨がないと、不安が払拭できず、結果的に研究へのエントリーがすすまない可能性が示唆された。従って、今後、乳がんのハイボリュームセンターに依頼し、研究計画を倫理審査委員会の承認を得て、担当医から対象となる患者に直接本研究参加の推奨をしていただく予定としている。 今後も様々な工夫を行い、対象患者のリクルートを継続する。
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