研究課題
本研究では、がん患者の経験する不安、抑うつを緩和する新たな精神医学的介入法として、費用対効果および携帯性にすぐれたスマートフォンを用いた問題解決療法および行動活性化療法の有効性を無作為化比較試験で検証した。また対象者の募集、説明と同意、評価項目の入力等のほぼすべての研究プロセスをインターネットをはじめとした情報通信技術を介して行う臨床試験(Decentralized Clinical Trial)の分散型臨床試験のシステムを構築した。対象者は、再発のない若年成人(20歳以上50歳未満)の乳がんのサバイバーで術後1年以上経過しているものとした。加えて、他のがんの経験がなく、精神科や心療内科で治療を受けていないスマートフォンユーザー(iPhoneユーザー)を対象とした。対象者のリクルートは、乳がん専門医からQRコードのついた研究の紹介リーフレットを配布するなどして実施した。その他、診療のハイボリュームセンターであるがん診療連携拠点病院への研究紹介のポスターの貼付、患者会などへの協力依頼、フェイスブックなどのSNSを利用して研究情報を拡散するなども行った。主要評価項目は、身体疾患患者の不安、抑うつの評価方法であるHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)得点の推移(第0-2-4-8週)の傾きとした。また介入群に対しては24週後の不安、抑うつの評価を行うこととした。最終的に447名の参加を得て研究が終了した。解析の結果、抑うつが有意に改善し、その結果は24週時点まで継続する可能性が示唆された。一方、不安については有意な改善は認めなかった。本試験の経験から、スマートフォン精神療法はがんサバイバーの抑うつ症状緩和に有用であることが示された。また分散型臨床試験が将来、有望な臨床研究の一つの形態になるのではないかと思われた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Clin Oncol
巻: 41 ページ: 1069-1078
10.1200/JCO.22.00699