研究課題
本研究課題の核心は、多くの内科疾患は症状に線形性があるが、統合失調症の幻覚や妄想は非線形である点であり、学術的「問い」はmissing heritabilityをバイオマーカーでつなぐことで見えてくる中程度のエフェクトサイズがどのように形成されるのかというものである。missing heritabilityにおいて、線形性をもつバイオマーカー(中間表現型)が臨床像の非線形性に変換される機序について探求する。治療抵抗性症例の血液を用いてメタボローム解析を行い、外れ値を示す症例を同定する。外れ値を示した分子の代謝律速酵素をリシークエンスしてエフェクトサイズの大きなレア・バリアントを同定する。一般症例の血液を用いて、治療抵抗性症例で外れ値を示した分子を測定した。一般症例を用いて律速酵素のコモン・バリアントを解析し、分子濃度も検討して正常値を超える症例とコモン・バリアントの関連を検討する。レア・バリアント症例のはずれ値よりは低く、コモン・バリアント患者の異常値よりは大きな数値を示した被験者で、律速酵素以外で代謝にかかわる複数の酵素遺伝子でコモン・バリアントを解析した。先行したGLO1のレア・バリアントとコモン・バリアントで治療抵抗性が両者をつなぐ表現型として示唆された。モデルマウスでは、脳内部位によりカルボニルストレスに対する脆弱性に差がある可能性が示唆された。レア・バリアント症例が樹立したiPS細胞から分化誘導して中枢系細胞では、細胞種により脆弱性の違いが示唆された。カルボニルストレスには線形性があるため、研究課題の核心をつく成果をあげつつある。また、新しい中間表現型のシーズが同定され、特定の臨床型と関連が示唆されつつある。
2: おおむね順調に進展している
モデル動物作成、iPS細胞の樹立とその解析、新しい中間表現型のシーズ同定など当初の目標を達成しつつあるから。
コロナウィルス蔓延により、新しい臨床サンプルの収集が困難になっているので、動物モデルとiPS細胞研究に重点を移して目標の達成をめざす。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
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