研究課題/領域番号 |
19H03594
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石川 正純 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80314772)
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研究分担者 |
小川原 亮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 博士研究員(任常) (00807729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SOF検出器 / PQD法 / DOI-PET / BNCT / 中性子計測 |
研究実績の概要 |
加速器BNCTでは、熱外中性子を主たる成分として照射することから、熱外中性子照射量をモニタできる検出器の開発が望まれている。そこで本研究では、熱中性子照射量をリアルタイムで測定可能なSOF検出器を改良し、異なる中性子増感物質を含むシンチレータを組み合わせることにより、熱中性子量、熱外中性子量、ガンマ線量を同時に評価することが可能な新たなSOF検出器を開発する。2019年度は、核反応断面積ライブラリJENDL4.0を用いてマルチコア型SOF検出器の中性子増感物質の候補となる核種の絞り込みを行った。候補物質の内Li-6、B-10、N-14の核種を含む化合物をそれぞれ選定し、実際にプローブ作成して計測を行ったが、B-10およびN-14では十分な信号が得られなかった。その原因を解明するために、Geant4シミュレーションを用いて核反応粒子によるシンチレータ内でのエネルギー付与およびそのエネルギーによる発光量を計算したところ、混入する中性子増感物質の粒径が信号の大きさに影響していることが判明した。また、同時に多チャンネルでの計測を行う必要があることから、Arduinoをベースとした安価な簡易計測システムを設計し、80MHzのパルス計測を4チャンネルで同時に計測できるシステムを構築した。 一方、BNCTでは患部におけるホウ素(B-10)濃度も治療効果に大きく影響する。患部への集積度は18F-BPA PET画像から評価されているが、血中ホウ素濃度との相関関係は患者に依存する。そこで、18F-BPA PET撮像中に同時に血中ホウ素濃度を測定するための腕部装着可能な小型PET装置を開発し、血中ホウ素濃度とPET画像による評価の相関関係を患者個別に構築できるシステムを開発を目指している。2019年度は、汎用高速計測ボードおよびASIC回路を3種類入手し、FPGAによる制御回路の設計に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、核反応断面積ライブラリJENDL4.0を用いてマルチコア型SOF検出器の中性子増感物質の候補となる核種の絞り込みを行い、候補物質の内Li-6、B-10、N-14の核種を含む化合物をそれぞれ選定し、実際にプローブ作成して計測を行ったが、B-10およびN-14では十分な信号が得られなかった。そこで、Geant4シミュレーションを用いて核反応後の粒子によるシンチレータ内でのエネルギー付与および核反応粒子による発光量を推定したところ、混入する中性子増感物質の粒径が信号の大きさに影響していることが判明した。 また、本研究で用いるマルチコア型SOF検出器の計測システムおよびプローブ先端の内部構造を正確に把握するためのマイクロフォーカスCT装置の制御システムのために、Arduinoをベースとした制御システムの開発に着手した。まず、同時に多チャンネルでの計測が可能な安価な簡易計測システムを設計し、80MHzのパルス計測を4チャンネルで同時に計測できるシステムを構築した。次に、購入したマイクロフォーカスX線源を制御するための制御システムを製作し、任意のタイミングでX線を射出することが可能なシステムを構築した。 一方、本研究で開発する腕部装着型PET装置のためのDOI検出器開発では、最低32チャンネルの高速信号処理回路が必要となることから、高速多チャンネル計測システムの検討を行ってきた。2019年度は、汎用高速計測ボードおよびASIC回路を複数入手し、FPGAを用いて汎用高速計測ボードおよびASIC回路を制御するための回路設計に着手した。また、PQD法を用いたDOI検出器開発として、Geant4による光学シミュレーションに複数の減衰時定数(Fast/Slow)が混在する場合のシンチレーション発光を正確に再現できる機能を実装し、シミュレーションベースでの光学設計の基盤を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の検討において、混入する中性子増感物質の粒径の大きさが信号の大きさに影響することが判明し、中性子増感物質の粒径をナノメートルオーダーにすることで飛躍的な改善が見込まれることが分かった。そこで、微細粒子粉砕装置を用いて中性子増感物質の粒径をナノメートルオーダーまで微細化し、微細化した中性子増感物質を用いたプローブで検出器の特性評価を行う。 また、本研究で開発するマルチコア型SOF検出器のプローブ先端に正確にシンチレータを配置されていることを確認するためのマイクロフォーカスCT装置の製作として、2019年度にマイクロフォーカスX線源を購入し、X線パルスを制御するための制御システムを製作した。今年度はX線イメージングデバイス制御装置を製作し、マイクロフォーカスCT装置として動作させることを目指す。 一方、本研究で開発する腕部装着型PET装置のためのDOI検出器開発では、最低32チャンネルの高速信号処理回路が必要となることから、高速多チャンネル計測システムの検討を行ってきた。2019年度にこのシステムに適した汎用8チャンネル高速計測ボードおよびASIC回路を3種類入手したので、汎用8チャンネル高速計測ボードを用いたDOI検出器開発を進めるとともに、ASIC回路を用いた多チャンネル計測システムの開発も平行して進める。 PQD法を用いたDOI検出器では、シンチレータの減衰時定数の違いで発光素子の同定を行っているが、市販されているシンチレータの減衰時定数は賦活剤濃度(Ceなど)に依存する。賦活剤濃度は製造過程で濃縮が起こるため、DOI検出器に使用する個々のGSOシンチレータのVp/Q値を測定し、シンチレータ組み合わせの最適化を行う。
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