研究課題/領域番号 |
19H03595
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古本 祥三 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00375198)
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研究分担者 |
吉川 雄朗 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70506633)
高浪 健太郎 東北大学, 大学病院, 助教 (90447160)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PET / 心筋血流 / 18F標識トレーサー |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでに取り組んできた18F-カチオン型トレーサー開発の継続的な発展課題であり、将来的に本格的な臨床研究の展開を見据えて行う新規PET薬剤のトランスレーショナル(橋渡し)研究である。この研究ビジョンの実現に向けて本年度は次の課題に取り組んだ。まず臨床用PET薬剤の製造法確立と安全性評価を目的として、これまでに確立した合成方法に従って合成を行い、目標とする1g以上の標識前駆体化合物を合成した。さらに、自動合成装置でのワンポット合成に利用できる新しい構造の標識前駆体を開発した。基礎実験においてその新規前駆体を用いても従来の前駆体と同等以上の収率で標識化合物を合成することができた。そこで臨床用途に適したカセット式標識合成装置であるFASTlab-Developerを用いて新規前駆体から18F-TAP-Xを製造する合成反応条件、精製条件、シークエンス等の検討を行った。その結果、高速液体クロマトグラフィーを利用せずに固相抽出カートリッジの利用だけで非常に高い放射化学的純度の目的標識体を自動合成することに成功した。つづいて心筋血流イメージング剤としての性能の評価を目的として、SPECTの標準的な薬剤である99mTc-MIBI と18F-TAP-Xの動態をラットの体内分布法により比較評価した。その結果、18F-TAP-Xの心臓集積率は99mTc-MIBIよりも2倍以上高い値を示し、心筋イメージング剤としての優位性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規PET薬剤を臨床へトランスレーショナルする際に重要になるのが自動合成装置による注射液製造法の確立である。本研究においてもそれが中核的課題であるが、18F-TAPはイオン性化合物であり自動合成化は困難が伴うと考えられた。しかし、新規標識前駆体を開発することでほぼ計画通りにFASTlabによる標識合成に成功し、次年度の計画につなげることができた。また、SPECTの標準薬剤であるMIBIとの動態比較評価において18F-TAP-Xの優位性を示唆する結果も得られた。したがっておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方針は、計画通り標識薬剤の自動合成法の最適を進め、臨床PETで使用できる品質の注射薬液製造法を確立する。さらに、18F-TAP-Xの心筋集積メカニズムの検証や心疾患モデル動物での心筋イメージング性能の評価を進める。臨床PETの実現に向けて、最適化したPET薬剤の標準作業手順書を作成し、3ロット試験を実施して薬剤の安全性や有効性を検証する。ただし、当初予期していなかったRI施設の改修工事が行われることとなり、令和2年度の後半はRIを用いた実験が一時的にできなることが判明したこと、および新型コロナウイルス感染症の影響によっても一時的に実験ができなくなる可能性があるため、それらの影響がない時期に可能な限りRI実験を集中的に行い研究を着実に遂行する計画である。
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