研究課題/領域番号 |
19H03596
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 英幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50235222)
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研究分担者 |
沼尻 晴子 (橋井晴子) 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (00712845)
水本 斉志 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (20512388)
二村 保徳 筑波大学, システム情報系, 助教 (30736210)
照沼 利之 筑波大学, 医学医療系, 助手 (40361349)
奥村 敏之 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50241815)
秋山 浩 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70818830)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線治療 / がん / 人工知能 / 効果予測 / 有害事象 |
研究実績の概要 |
人工知能技術を利用し,がんの放射線治療における「腫瘍の制御確率の予測プログラム」,および「正常組織の有害事象予測プログラム」に関する基盤的研究を行い,臨床で利用可能なプログラムの開発につなげるためのトランスレーショナルリサーチを行う. 治療効果予測は,腫瘍組織の放射線照射による変化の機械学習から効果予測プログラムを作成することを目的とする.腫瘍組織の放射線感受性は,臓器および組織型による特性があるとともに,病理形態(腫瘍細胞の配列,分化の程度,核・細胞質比,血管構築など)により左右される.また一定の線量が照射された腫瘍組織には,核の膨化,巨細胞形成,異常核分裂,アポトーシス,組織球浸潤などの変化が認められ,それらの細胞変化の程度が治療効果と相関している.効果予測プログラムの作成のために,子宮頸がんの照射後の組織とMRI画像をデジタル化し,それらの画像情報をAIに学習させる手順について検討する. 正常組織への影響はこれまでの小児がんの放射線治療例の画像所見の変化の機械学習から,骨の変形など小児の成長過程を考慮した有害事象予測プログラムを作成する.小児がんの放射線治療および陽子線治療を実施した患児の治療前および経過観察時(成長の過程)の3次元画像と実際に行われた線量分布を用いて,小児期に行われた放射線治療が,成長発育にどのような影響を与えるのかを可視化できるようにすることを目的とする.過去に放射線治療または陽子線治療が実施された症例の治療計画時(治療前)のCTスキャンを利用した3次元画像,経過観察の際に撮影されたCTやMRIなどの3次元画像を用いて,過去の画像変化から照射線量と骨の成長率の計算式を作成する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のゴールは,2022年度までに,照射中の組織変化と画像変化から治療効果を予測するプログラムを作成すること,小児の照射後の骨成長について定量的,定性的な予測プログラムを作成することである. 病理組織学的変化に基づく腫瘍の制御確率の予測プログラムについては,子宮頸がん根治照射後の2年無増悪生存の予測を機械学習で検討する.子宮頸がん166例のうち,遠隔転移症例およびcT1b1N0を除く134例を対象とし,診断時の年齢,PS,ステージングなどの臨床因子,化学療法有無や線量などの治療因子,治療後の治療反応因子の合計21の因子を変数,2年後の無病悪生存イベント有無を正解クラスとし,訓練群と検証群に分割し学習し評価を行った.機械学習はPython言語のscikit-learnライブラリのLogisticRegression,SVC,DecisionTreeClassifier,RandomForestClassifierの分類モデルを用いた.3分割交差検証を適用し,各モデルの分類精度をROC曲線下面積(AUC)を求め比較した.前処理を行い機械学習に用いることができたデータは97例(72%),観察期間中央値は27ヶ月(0.6-86ヶ月),イベントありは28例(29%)であった.分類モデルのLogisticRegression,SVC,DecisionTreeClassifier,RandomForestClassifierのAUCはそれぞれ0.64,0.46,0.66,0.73であった. 小児の成長過程における正常組織の有害事象予測プログラムでは,MRIから骨構造を抽出するプロセスについて検討を行った.2021年度はMRIから骨構造を抽出するプロセスについて検討を行った.今後,多数例の過去の画像変化から照射線量と骨の成長率の計算式を作成することとしている.
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今後の研究の推進方策 |
病理組織学的変化に基づく腫瘍の制御確率の予測プログラムについては,2021年度は無治療時および照射時の病理標本を収集し収集し,現在約50例の子宮頸癌の治療効果を反映するサンプルを画像化,標準化した.今後その領域を抽出するプロセスを終了した.また,治療経過中のMRI画像を匿名化し,連続した画像ファイルを作成した.これをもとに,筑波大学の人工知能(AI)センターとプログラム作成に関する打ち合わせを開始した.また,大学院生1名が,日本医学放射線学会主催の人工知能セミナーに参加し研修を行った.具体的なプログラム作成にかかわる解析結果が出てきており最終年度に向けて成果が期待できると思われる. 小児の成長過程における正常組織の有害事象予測プログラムでは,2021年度はMRIから骨構造を抽出するプロセスについて検討を行った.骨の成長率の数値化と形状変化予測するために,①MRIから変換したCT画像から骨の輪郭を抽出,②照射前の骨の輪郭とフォローアップ時の輪郭の形状変化を計測,③形状変化と線量との関係を計測,④線量を入力として輪郭の形状変化率を計算する関数を作成するという一連の検討を実施してゆくこととする.MRIから骨の画像を作成する部分で,そのプログラム作成でやや手間取っている.骨の成長に関する画像の比較については,データ取得を継続して行うこととしている.
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