研究課題/領域番号 |
19H03598
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
絹谷 清剛 金沢大学, 医学系, 教授 (20281024)
|
研究分担者 |
萱野 大樹 金沢大学, 附属病院, 講師 (10547152)
小川 数馬 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30347471)
村山 敏典 金沢大学, 附属病院, 教授 (30378765)
稲木 杏吏 金沢大学, 附属病院, 講師 (40645131)
若林 大志 金沢大学, 附属病院, 助教 (60622818)
今井 康人 金沢大学, 附属病院, 特任教授 (60720878)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 神経芽腫 / 内照射療法 / MIBG / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
神経芽腫細胞株SK-N-SHとSK-N-F1について、PD-L1発現をフローサイトメトリーにて解析し、SH細胞では発現しておらず、F細胞の発現を確認した。F細胞およびSH細胞はCD45-CD56+にて同定できた。それぞれの細胞株のX線照射時のPD-L1発現を検討した結果、F細胞では発現増強は認められなかったが、SH細胞ではX線照射によりPD-L1の発現増強を認めた。また、健常正常人の血液との混合培養下で、腫瘍細胞はCD45-CD56+細胞として同定が可能であることを確認し、PD-L1の発現増強が示唆された。これらの結果は、追試確認中である。 放射性ヨウ素131Iの高エネルギーガンマ線が、治療時の医療従事者被ばく、長時間の患児治療室入室などの面で不利益であるため、物理的特性が優れている177Lu等々の治療用核種への転換を企図した。MIBG類似の177Lu標識体合成は困難であることより、神経芽腫で発現するEGFR、PDGFRをターゲットとして検討した。PDGFRβへの輸送担体としてペプチドを選択し、放射性金属錯体67Ga-DOTAとペプチドとの間にリンカーを挿入したプローブの設計、合成、評価を行った。[67Ga]Ga-DOTA-EG2-ペプチドの腫瘍集積は良好で、過剰量ペプチド同時投与により有意に減少し、この集積のPDGFRβ特異性が示された。 神経芽腫MIBG治療を医師主導治験として継続した。医師主導治験の整備を経験したことにより、本課題を臨床に持ち上げるための基盤作りとなった。 131I-MIBG治療時の医療従事者被ばく低減のためには、鉛シールドエプロンを一般には使用するが、ガンマ線遮蔽が十分ではなく、改善が求められていた。被ばく量低減を企図して、タングステンシールドエプロンの効果を検証した。これを用いることで、被ばく量を約1/7に低減可能であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの検討で、使用する神経芽腫細胞株のMIBG集積性、PD-L1発現性、放射線照射時のPD-L1発現性変化などの情報が得られ、次年度の担癌動物におけるin vivo検討のための基礎が確立された。 MIBG以外の放射性化合物の可能性を検討した結果、PDGFRβをターゲットとする小分子の放射能標識が実証できた。これにより68Ga-177Luを応用したセラノースティクスへの道が開けたことにより、現状の治療よりも、安全かつ効果的な治療開発への期待が持たれる。 最終ゴールである臨床への実装については、MIBG治療を医師主導臨床治験の実施を行い、より精度の高いデータ収集を行った。本課題の臨床応用に際して先行事例とすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
試験管内においてMIBG集積に対する抗PD-L1抗体あるいは抗PD-1抗体の影響を確認し、担癌モデルにおけるPD-L1発現確認、実験モデルにおけるMIBGの体内動態観察・治療時の臓器線量推定を実施する。その情報を元に治療時投与量を設定し、治療実験を行う。それらの条件を、次のステップであるMIBG治療と免疫療法の併用効果観察、両治療シークエンスの最適化検討につなげる。 治療適応判断のための腫瘍のPD-L1発現画像化のため、抗PD-L1抗体の99mTc標識体を作成し、皮下担癌モデルにおいてシンチグラム撮像を行い、その画像化の可否を探る。IgG、Fab、F(ab’)2で評価し、至適分子を探る。また、99mTcの物理的半減期が至適撮像にそぐわないと考えられる場合には、125I標識体(臨床においては123Iに置換可能である)で種々の検討を行うこととする。動物用SPECT/CT装置(MILabs, VECTor+/CT)により経時的な撮像を行い、至適撮像時間を得る。 医師主導治験において症例を重ね、実施習熟を図る。線量評価を臨床例において実施する。
|