研究課題/領域番号 |
19H03601
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浦山 慎一 京都大学, 医学研究科, 研究員 (10270729)
|
研究分担者 |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
松橋 眞生 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40456885)
赤坂 太 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00883224)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 7T-MRI / head coil / non-pTx / RF mode switching / B1 inhomogeneity |
研究実績の概要 |
臨床用MRIの数倍の磁場強度を有する7テスラMRIは、送信波強度が体内で不均一になり、画質を大きく低下させることが問題となっている。その解決には、非常に高価で技術的に困難なパラレル送信システムによるのが一般的であるが、我々は、「RFモードスイッチング」と呼ばれる新しいコンセプトに基づいた専用RFコイルシステムを設計・開発、安全性評価などを経て評価実験を行うことにより、このB1不均一問題の解決に取り組む。 2020年度はまず、前年度に開発を開始したopenEMSを用いた電磁波シミュレーション環境を完成させたのち、現有のバードケージコイルのシミュレーションを行い、ファントム実験結果との比較を試みた。しかしながら、現状では両者の乖離は小さくは無く、実用化には至っていない。考えられる主要因はおそらく、シミュレーションに用いてるコイルのモデルが完全では無く、例えばシールド層やバイアスラインの細かな構造、ファントムを構成する材料の誘電率、透磁率などが正確に入力できていないことが考えられる。 また次に、前年度に設計したテストコイルシステムの内の、送信経路選択スイッチの設計変更を行った。送信経路選択スイッチは、MRI装置の送信波電源アンプから出力された送信波電流を、MRIシーケンス制御コンピュータからのTTL信号を受けて、2つの出力ポートの内のどちらかに振り分けるための回路である。前年度の設計では、分岐した2つの経路にそれぞれブロッキング回路を設置し、そのどちらかをONにすることで経路選択を行っていたが、この場合、選択された経路上のブロッキング回路が、送信波電流自身によってONとなってしまい、双方の経路がブロックされるリスクがあった。そのため、3層のループコイルを重ね、第2層の送信コイルから第1もしくは第3層の受信コイルに送信波電流を渡すよう、設計変更を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本プロジェクトは、豪州クィーンズランド大学のMartijn Cloos博士との共同研究であるが、開発した機器を7T-MRI装置に接続する時には、その装置とRFコイル開発や安全性に関して熟知しているCloos博士を招聘し、同席してもらう必要がある。しかしCOVID-19のためにCloos博士を招聘出来ない状況が続いており、コイルの実証実験が出来ず、結果、プロジェクトに遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは、再設計した送信経路選択スイッチを含む、全てのテストコイルシステムを完成させ、ファントム実験を行い、RFモードスイッチング技術の有用性を評価する。またopenEMSを用いた電磁波シミュレーション環境の構築及びシミュレーション精度の向上も引き続き行う。 次に、COVID-19のために共同研究者であるDr.Cloosを招聘できず、進んでいなかった送信用・受信用の2層に分かれたプロトタイプコイルシステムの開発を行う。プロトタイプコイルの外層には送信コイルを、内層には受信コイルを設置する。送信コイルは、直径を大きくすることにより被験者との間の距離をあけることができ、SARを低減して安全性を確保出来る。逆に受信コイルは、被写体に近づけることにより信号ノイズ比を向上させることが出来る。各コイルのチャンネル数は、送信コイルは8、受信コイルは8~32チャンネルから選択する。開発後、まずはファントム実験により性能評価を行う。
|