研究課題/領域番号 |
19H03603
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
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研究分担者 |
赤坂 浩亮 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20707161)
宮脇 大輔 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (30546502)
文野 誠久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40405254)
出水 祐介 神戸大学, 医学研究科, 客員准教授 (50452496)
福本 巧 神戸大学, 医学研究科, 教授 (70379402)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スペーサー / 粒子線治療 / 骨軟部腫瘍 / 小児腫瘍 |
研究実績の概要 |
我々は外科用吸収糸を三次元加工した不織布型の生体適応性の吸収性スペーサーを世界に先駆けて独自開発し、治療期間のみ吸収性スペーサーにより腫瘍と正常組織を分離する体内空間可変粒子線治療を提唱した。その後、骨盤腫瘍に対して吸収性スペーサー留置後に陽子線と炭素イオン線治療のいずれかを用いたFirst-in-Humanの臨床治験を実施し、非臨床試験の成果と併せて新医療機器として薬事申請し承認された。それに引き続き、吸収性スペーサーは保険承認され、さらにスペーサー留置術も保険適応が認められ、本治療法が広く実施できるための道を切り開いた。我々は、吸収性スペーサがこれまで小児で一例も実施されいないことを受け、骨軟部腫瘍では前向き症例登録を実施中であり、現時点では良好な治療成績が得られている。一方で、小児悪性腫瘍に対して第一相臨床試験を立案・実施し、現在予定されていた症例登録が終了し、それらの症例における本治療法の有効性と安全性を確認中である。また、 柔軟で低癒着な次世代の吸収性スペーサーの開発に関してもPMDAとの相談を重ね、現在必要な非臨床試験を実施中である。頻度の多い腹部悪性疾患への適応基準の明確化と定位放射線治療への適応拡大に関してもPMDAとの相談を重ねており、吸収性スペーサー留置を軸とした本治療法(体内空間可変治療)を、様々な疾患に対して標準治療法として確立していくためのそれぞれの道筋が着実に積み上げられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては4課題に大別し、 ① 切除不能骨軟部肉腫、小児悪性腫瘍に対する体内空間可変粒子線治療のPhase I/II 臨床試験を立案・実施し本治療法の有効性を明らかにする、 ② 吸収性スペーサーと生殖器の保護を目的とする被曝低減手術との融合治療の開発、 ③ 柔軟で低癒着な次世代の吸収性スペーサーの開発、 ④ 頻度の多い腹部悪性疾患への適応基準の明確化と定位放射線治療への適応拡大、を提案したが、①に関してはほぼ予定通り順調に計画を遂行できている。②に関しても①の結果の解析結果を待ってさらに検討を進める予定であるが、現時点ではやや遅れている。③に関しては、ほぼ予定通りに計画を遂行できており、成果が得られている。④に関しては、ほぼ予定通りに計画を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、本治療法は、薬事承認、保険適応を受けたという大きな成果に後押しされ、医療の現場で順調に波及しつつある。しかしながら、極めて新規性の高い治療法であるため、慎重に研究を進めていく場面にも遭遇する。例えば、化学療法併用に関する場合の安全性や、小児腫瘍における術後に本治療法を実施する場合の安全性などに関しては、よりクローズアップされてきた課題といえる。また吸収性スペーサーの内部発生するガスに関しては、著明に貯留する症例も散見されることなどからは、今後、詳細な基礎的検討、臨床的観察が望まれることだという認識を持っている。本治療法に関しては、医師間、施設間での情報共有が、安全性に繋がると認識しており、臨床研究を速やかに準備、実施できる体制を踏まえた臨床試験グループを組織し、更なる展開を目指している。また、外科手技に関して、経験の多い外科医が複数名集まり意見交換し、その情報を集約して、広く情報発信していく予定である。
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