研究課題/領域番号 |
19H03606
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
天滿 敬 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (90378787)
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研究分担者 |
近藤 直哉 大阪医科薬科大学, 薬学部, 助教 (80756172)
藤森 功 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70425453)
秋澤 宏行 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (90311795)
尾江 悟 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (90756107)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内用放射線療法 / 免疫療法 / がん微小環境 / FABP4 |
研究実績の概要 |
1.がん関連脂肪細胞(CAA)を標的とする内用放射線治療用薬剤開発 本研究項目では、CAA細胞内に高発現し、がん細胞の増殖や転移能の亢進に関与する脂肪細胞型脂肪酸結合タンパク質(FABP4)をターゲットとした薬剤の開発を進めている。本年度は昨年度に引き続き、これまでに研究代表者らが開発したFABP4を標的とする核医学分子イメージング用放射性ハロゲン標識プローブ(18F-FTAP1、123/125I-TAP1)の構造を基に、その物性改善を目指した複数の誘導体を設計・合成した。特に、TAP1と同等の高いFABP4結合親和性を認めた化合物について放射性フッ素標識の基礎検討を開始し、低収率ながら1ステップの簡便な操作での標識が可能であることを見い出した。
2.がん関連マクロファージ(TAM)を標的とする内用放射線治療用薬剤開発 TAMは腫瘍の発生、進行、転移を制御することが明らかとなり、最近がん治療標的として大きな注目を集めている。TAMは主にM2マクロファージと考えられることから、本研究項目では、M2マクロファージあるいはM1からM2への分極を制御する分子を標的とした薬剤開発を進めている。本年度は昨年度に引き続き、有望な標的分子と期待されるp38αを対象としたプローブ開発に取り組み、有効な放射性ヨウ素プローブの開発に成功するとともに、放射性臭素標識プローブの高い可能性を認めた。加えて、STAT3標的放射性ハロゲン標識プローブの合成を進め、標識前駆体の合成完了に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6.研究実績の概要に記載の通り、CAA標的薬剤開発ではFABP4を標的とした種々の誘導体設計・合成を進めいくつかの有望なハロゲン導入化合物を見い出し、実際に放射性ハロゲン標識検討を開始した。TAM標的薬剤開発ではp38αを標的とした有望な放射性ハロゲン標識プローブの開発に成功し、STAT3を標的とした新たなプローブ合成も鋭意進行中である。 以上より、本研究課題3年目の進捗状況はおおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.CAAを標的とする内用放射線治療用薬剤開発 本研究項目では、これまでに得られている結果を受けて、より有効と考えられる誘導体の設計・合成・評価を進めていく。結合親和性の評価方法に等温滴定カロリメトリーを導入するなど新たな評価系構築も課題としながら、FABP4に対する結合親和性を評価して合成化合物から候補化合物を絞り込んだ後、細胞膜透過性やFABPサブタイプ選択性などのインビトロ評価を進めていく。有望な可能性が高い化合物については、インビトロ評価と並行して標識前駆体を合成し、放射性ハロゲン標識検討を随時行う。得られた標識体を用いて、脂溶性や血漿中安定性などの基礎的な物性評価を行うとともに、モデル動物を用いて体内動態や血中クリアランスを調べる。得られた結果は常に分子設計にフィードバックし、有効なCAA標的薬剤の創出につなげる。
2.TAMを標的とする内用放射線治療用薬剤開発 本研究項目では、これまでに得られている結果を受けてさらなるインビボ評価を推進し、M2マクロファージを標的とした薬剤としての有効性と可能性を調べていく。STAT3標的プローブについては合成を完了次第、インビトロ・インビボ評価へ展開する。また、新たな標的候補分子の探索とそれを標的とした新規ハロゲン導入化合物の設計・合成を行い、引き続くインビトロ・インビボ評価と最適化検討により、有効なTAM標的薬剤の創出につなげる。
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