研究課題/領域番号 |
19H03609
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
吉井 幸恵 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主幹研究員(定常) (10397242)
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研究分担者 |
下瀬川 恵久 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (30370258)
山谷 泰賀 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, グループリーダー(定常) (40392245)
畑澤 順 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70198745)
田島 英朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員(定常) (70572907)
張 明栄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 部長(定常) (80443076)
渡部 直史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90648932)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PET |
研究実績の概要 |
放射性標識抗体を用いた高分解能PETによる膵がん超早期画像診断法の開発 膵がんは、最も生存率が低いがんの一種であり、対策が急務である。膵がんの生存率が低い原因として、早期発見・早期手術に欠かせない適切な画像診断法がないことが挙げられる。一方、研究代表者は、多くの膵がんに過剰発現する標的に対する抗体を、PET画像診断に使用できる放射性核種で標識した「放射性標識抗体」を合成し、マウスでの検討より本薬剤を、膵がんに高集積させられることを明らかにしてきた。さらに、研究分担者が開発した高分解能PETでこれを撮像すると、超早期膵がんを検出できることも明らかにしてきた。そこで本研究は、膵がん超早期画像診断法の提供を目指し、放射性標識抗体による画像診断の臨床開発の可能性を明らかにするため、①非げっ歯類体内動態、②膵臓内薬剤分布、③血液バイオマーカーと腫瘍集積の相関性を検討することを目的としている。 本年度は、薬剤合成・マウスでの副作用標的臓器の検討を行った。放医研において放射性核種を製造し、放射性標識抗体を製造した。本検討では、放射性標識抗体を正常マウスに投与し、その後経時的にマウスを解剖し臓器を摘出し、臓器重量当たりの放射能集積量(%ID/g)を求め、放射能が高集積する副作用標的臓器を詳細に検討した。特に、膵臓に対する薬剤分布を明らかにした。また、マウス膵がん同所移植モデルを作成し、血液バイオマーカー発現調査のため、血液を採取し血漿をELISA分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、薬剤合成・マウスでの副作用標的臓器の検討を行った。この際、放医研においては、定期的に放射性核種を製造し、放射性標識抗体製造に供することができた。また、薬物動態試験においては、研究代表者の過去の経験を活かし、順調に放射性標識抗体のマウスへの投与を実施し、適切にマウス解剖、臓器重量当たりの放射能集積量測定を行うことができた。さらに、オートラジオグラフィー法などを用い、膵臓に対する薬剤分布を明らかにすることもできた。また、血液バイオマーカー検査についても、適切なマーカーを選択し、作成したマウス膵がん同所移植モデルの血漿を用い、ELISA分析することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、カニクイザルにおける体内動態試験を中心に行う。 カニクイザルを使用し、放射性標識抗体のPETを用いた体内動態試験を行う。本検討は、カニクイザルを用いた動態試験の経験を有する分担研究者とともに行う。PET試験は、カニクイザルに合成した放射性標識抗体を投与し行う。投与量は、PET装置の感度などを加味して決定する。各測定時間点においてPET撮像し、主要臓器(肝臓、心臓、肺、腎臓、膀胱、左心室血等)における集積量(%ID/mL)を算出する。得られたデータをもとに線量解析ソフトウェアを用いて線量解析を行い、各臓器における時間放射能曲線、滞留時間を求めると共にヒト臓器における被ばく線量を推定する。現在までに、サルを用いた投与予備試験を既に実施しており、手技には問題がない環境を整えている。
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