研究課題
ステルス型RNAベクター(SRV)を用いてヒトおよびマウスの造血幹細胞/前駆細胞,即ち,ヒト臍帯血CD34陽性細胞およびマウスのlineage-c-kit+sca-1+細胞をターゲットとして、遺伝子治療開発研究を継続している。いずれも高い遺伝子導入効率が得られることを再確認し,Methocult m3434を用いたコロニーアッセイの結果,遺伝子を導入した造血系前駆細胞は増殖能および分化能を有していることが確認できた。特に,ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞では、MOI 10で、GFP陽性率90%と極めて高い遺伝子導入効率が確認された。長期的にin vitroで培養すると、マウスの細胞よりもヒト臍帯血造血幹細胞/前駆細胞が遺伝子導入後の細胞機能の安定性が高いことが確認できた。また,ヒト由来共通γ鎖欠損ED40515細胞に共通γ鎖をSRVを用いて遺伝子導入したところ、IL-2刺激によりSTAT5のリン酸化が確認することができ、受容体からのシグナル伝達が正常におこることを確認できた。他方,遺伝子を導入した細胞を長期的に培養すると,導入した遺伝子の発現を維持する事が難しい場合があるという事がわかり,以前用いていたベクターとは異なる結果となった。遺伝子導入したマウス造血幹細胞/前駆細胞を放射線照射したNOGマウスに静脈内投与した結果では,現時点では不十分血球増殖しか得られていない。遺伝子導入した細胞のRNA Seq解析を行ったところ,遺伝子非導入細胞と比較すると,若干細胞増殖や細胞死に関連する遺伝子発現に差が見られ,遺伝子導入後の細胞の分化・増殖が安定していない可能性がある。SRVベクターは遺伝子発現量が極めて高い事やベクターに搭載している蛍光遺伝子に問題がある可能性があり,これらの点を改良したベクターで研究を継続する。
2: おおむね順調に進展している
マウスの造血幹細胞の純化や、実際の遺伝子導入、NOGマウスのirradiation、NOGマウスへの遺伝子導入細胞の投与などは順調に行う事ができ,特にヒトCD34陽性細胞では安定した遺伝子導入が可能である事がわかってきた。共通γ鎖欠損細胞に遺伝子導入することによって機能が回復することも確認できた。遺伝子導入後の細胞の変化についてRNA Seqによる検討を行ったところ,若干細胞増殖や細胞死関連の遺伝子発現に影響が見られ,遺伝子導入後の細胞の安定性を得るためにもベクターのさらなる改良を行う事にした。このように,ベクターの特徴や遺伝子導入後の細胞の変化などについて詳細な解析ができていると考えている。研究で用いる大型機器は、ほとんど筑波大学内のオープンファシリティーシステムにあるため、研究が順調に進行している。マウスを用いた実験は、研究環境の整備された筑波大学内の動物資源センターで順調に進めることができた。研究協力者である産業技術総合研究所/ときわバイオの中西真人先生や筑波大学蛍光バイオイメージング研究室の三輪佳宏先生とは、定期的に研究内容についての会議を開催している。
現在のベクターを用いて,遺伝子修復への橋渡しを行うことも可能であると考えられる。特に,放射線感受性の高い重症複合免疫不全症患者の造血系細胞は増殖が不安定であり,このベクターを用いて細胞増殖を安定化し,遺伝子修復につなげることが可能であると考え実際に研究に着手している。ベクター自体のさらなる改良も平行して行っており,近く完成予定である。今後は,新たなベクターを用いて,遺伝子導入を行い,遺伝子導入した造血系前駆細胞を用いた研究を行っていく方針である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 1件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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