研究課題
ステルス型RNAベクター(SRV)を用いてヒトおよびマウスの造血幹細胞/前駆細胞をターゲットとして、重症複合免疫不全症に対する遺伝子治療開発研究を継続している。マウス及びおよびヒト由来造血前駆細胞を用いると高い遺伝子導入効率が得られることを再確認し、コロニーアッセイでも、遺伝子導入した造血系前駆細胞は増殖能および分化能を有していることが再確認した。他方、遺伝子を導入した細胞を長期的に培養すると,導入した遺伝子の発現を維持する事が難しい場合があるという事が判明したため、今年度は、造血前駆細胞の機能に影響がある可能性を排除できないEGFP搭載SRV ver.2に替わって、ヒトでの臨床試験でレンチウイルスベクターに搭載されているマーカー遺伝子を搭載したSRV ver.3(ΔLNGFR /DHFR(L22Y))を使用した解析を進めた。SRV ver.3 (ΔLNGFR /DHFR(L22Y))のうち発現が弱い8種類の提供を受け、順次マウス造血幹細胞への遺伝子導入を行った。また、ベクターの1つは、ベクターに対する免疫応答の主体となるRIG-Iの機能を阻害する分子を搭載している。さらにこれらのベクターには、dihydrofolate reductaseが搭載されており、遺伝子導入細胞をメトトレキサート(MTX)を用いて選択的に培養可能となり、より臨床応用に近づいている。これらの新たなベクターは、ED40515細胞にMOI 1~10と低いMOIでも高い効率に遺伝子導入が可能である事がわかった。マウス骨髄由来のKSL細胞にも同様に高い効率で遺伝子導入が可能であった。今後、臍帯血CD34陽性造血前駆細胞および長期的な細胞分化に関する検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究協力者である産業技術総合研究所/ときわバイオの中西真人先生や筑波大学幹細胞治療分野の山崎聡教授と定期的に研究内容についての会議を開催している。今回、長期的な遺伝子導入維持が期待できる新たなベクター(SRV ver.3(ΔLNGFR /DHFR(L22Y))が完成し、それを用いた研究を開始できた。また、宿主の免疫応答を抑制する分子を導入したベクターも完成し研究を開始している。実際にマウスの造血幹細胞の純化や、実際の遺伝子導入、NOGマウスのirradiation、NOGマウスへの遺伝子導入細胞の投与などは順調に行う事ができている。In vitro解析としてコロニーアッセイを繰り返し行っているが、安定した結果が得られている。研究で用いる大型機器は、ほとんど筑波大学内のオープンファシリティーシステムにあるため、研究が順調に進行した。マウスを用いた実験は、研究環境の整備された筑波大学内の動物資源センターで順調に進めることができている。
引き続きSRV ver.3(ΔLNGFR /DHFR(L22Y))で遺伝子導入したマウス造血幹細胞を移植して、造血系のin vivo再構成の効率や長期持続性を検討すると共に、さらに新たな改良ベクターSRV ver.4(ΔLNGFR /DHFR(L22Y))でも同様の解析を開始する。SRV ver.3(ΔLNGFR /DHFR(L22Y))8種のうちもっともin vivo持続性の結果が良いベクターにマウスIL-2RG遺伝子を搭載し、IL-2RG活性の確認とX-SCIDモデルマウスでの骨髄再構成を行う。2022年度のマイルストーンは、提供されたSRV ver.3/4の構造とin vivoでの長期持続性の関係を明らかにし、長期持続に必要な条件を明らかにする。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (26件) (うち査読あり 26件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (22件)
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