研究課題
ステルス型RNAベクター(SRV)を用いてヒトおよびマウスの細胞をターゲットとして、遺伝子治療開発研究を継続している。ステルス型RNAベクター(SRV)で遺伝子発現量の異なる4種類のベクターを用いて遺伝子導入効率および導入された遺伝子の発現について検討を行った。セルソーターで純化したマウス由来造血前駆細胞に遺伝子導入し、in vitroで培養すると、高発現ベクターや低発現ベクターでは長期間の細胞の維持が難しいことが判明した。共通ガンマ鎖欠損マウスあるいはNOGマウスに移入した場合、一過性に遺伝子発現は認められるものの、長期的に遺伝子導入細胞を維持することは困難であったが、遺伝子発現をやや低めに調整されたベクターを用いた場合に最も長期間遺伝子発現を維持できることが分かった。実際に共通ガンマ鎖欠損マウス骨髄から造血前駆細胞を純化し、このベクターで遺伝子導入した細胞を、当施設の山崎教授が考案されたポリビニールアルコール入り培養液で増殖させたのち、共通ガンマ鎖欠損マウスに静脈内投与すると、末梢血T細胞数が上昇し、長期間減少傾向がみられないことが確認された。しかしベクター由来の遺伝子発現は消失していることが確認された。即ち、造血前駆細胞に共通ガンマ鎖が一時的に発現することによって、T細胞の分化が誘導可能であること示唆する結果であった。共通ガンマ鎖欠損症に対して、SRVを用いてこれまでの遺伝子治療法とは異なる機序で、遺伝子治療が可能であることが示唆された。今後、多数の共通ガンマ鎖欠損症で確認し、出現してくるT細胞数の変化の有無を確認するとともに、T細胞機能を詳細に解析する方針である。
2: おおむね順調に進展している
ベクターを改良し、遺伝子発現量を低く抑えることができた。また、マウス骨髄由来の造血前駆細胞をポリビニールアルコール入りの培養液で、培養することができ、遺伝子治療の基本的な骨格が固まった。マウスの造血前駆細胞にステルス型RNAベクターを用いて共通ガンマ鎖を遺伝子導入し、その細胞を共通ガンマ鎖欠損マウスに投与したところ、T細胞数の回復を確認することができた。
遺伝子治療によってT細胞が回復することは確認できたが、導入した遺伝子発現が確認できていない。即ち、導入した遺伝子は、細胞分化の一定の時期のみに必要であり、その後、遺伝子発現が何等かの機序によって抑制された可能性が高い。導入した遺伝子の発現の状態を詳細に確認するとともに、マウスのnを増やして実験結果を確認し、回復したT細胞の表面マーカーやその機能を詳細に確認する。T細胞の回復が、共通ガンマ鎖遺伝子の一時的な発現で充分であるのか、長期的な面を含めて機能的に問題が生じるのかを確認し、共通ガンマ鎖の機能の中の、IL-7受容体機能のみで代償できるのかどうかなど、この新たな知見のメカニズムを詳細に解析していく。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 1件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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