研究課題/領域番号 |
19H03624
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岡崎 康司 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80280733)
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研究分担者 |
木下 善仁 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20634398)
Wu Yibo 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (50811618)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミトコンドリア病 / 全ゲノム解析 / RNAシーケンス / プロテオーム |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア病はミトコンドリア機能異常に端を発する疾患であるが、現在国の定める指定難病となっている。小児のミトコンドリア病はミトコンドリア遺伝子の変異よりも核遺伝子の変異が原因となるものが多いと考えられている。現在までに、350を超える核遺伝子に原因変異が見つかっている。研究代表者・岡崎らは、これまでに日本国内で最大規模のミトコンドリア病の臨床診断と疾患ゲノム解析に取り組んできた。これまで遺伝子エクソン領域をターゲットとした全エクソーム解析を中心として遺伝子解析を進めてきたが、全エクソーム解析での限界も見えてきた。そこで本研究では、RNAシーケンシング、全ゲノム解析、プロテオーム解析の多階層オミクス技術を用い、このゲノム解析の基盤を拡張させ、さらなる原因解明に取り組んだ。WGSとRNA-seqの解析から、これまでの解析では同定することができなかったイントロン-エクソン領域に、複数の欠失を見出すことに成功した。特にこの領域にはSINEなどを介した欠失が多く起こっていることを明らかにした。これらの発見についての成果は、現在論文投稿準備中である。さらに、それだけでなくATAD3A、ATAD3B、ATAD3Cの遺伝子ファミリークラスターで、遺伝子重複が起こることも見出した。この遺伝子重複によって本来存在しない融合遺伝子が生じ、心筋症等の症状を呈するミトコンドリア病患者を複数見出した。他の海外の共同研究機関においても複数症例が発見された。いままで見過ごされてきたが、この遺伝子異常は潜在的に非常に多く発生するものであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調にWGS、RNAシーケンス、プロテオームの解析を進めることができた。さらに、これらの解析から、従来の全エクソーム解析からでは明らかにすることができなかった、新たな遺伝子異常をみつけることもできた。また、ATAD3領域における重複が引き起こす新たなミトコンドリア病を発見し、これらの成果をまとめた論文を投稿するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降もWGS、RNAシーケンス、プロテオームの解析数を増やし、これまでに未解決となっていた症例から原因遺伝子を見出す取り組みを継続させる。欠失や重複など様々な構造異常を明らかにすることができたが、さらにゲノムデータ解析系にde novoアセンブリなどの技術を投入し、検出精度を高めていく。また、プロモーター領域やエンハンサー領域などに存在する遺伝子異常を明らかにするため、マルチオミクスデータの統合的解析を強化していく。理研CAGE等の公共データの取り込みを今年度進めたので、これらを最大限活用して、プロモーターとエンハンサーの遺伝子異常を詳細に解析していく。
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