研究課題
近年、ゲノムDNA中に存在が確認された5-ヒドロキシメチル化シトシン(5-hydroxymethyl C: 5hmC)は、5-メチル化シトシン(5-methyl C: 5mC)の酸化産物であり、DNA脱メチル化反応における中間代謝産物として注目されている。本研究は、メチル化異常に起因する小児インプリンティング異常症において、ヒドロキシメチル化が病態にどのように関与しているかを解明することが目的である。5mCと5hmCを区別するための酸化バイサルファイト(oxBS)処理に続いて、パイロシークエンサー(oxBS-pyro)、メチル化ビーズアレイ(oxBS-array)、次世代シークエンサー(oxBS-seq)による解析を行い、一塩基レベルの“methylome”および“hydroxymethylome”を明らかにする。今年度はインプリンティング異常症例のバイサルファイト処理および酸化バイサルファイト処理、パイロシークエンサーによる解析を行った。この過程で、シルバーラッセル症候群に類似した成長障害を主症状とする症例に、新規のメチル化異常を同定した。これは過去に報告のないメチル化異常であり、新規のインプリンティング異常症である可能性があるため、論文報告した(Yamazawa et al. J Med Genet 2020 in press)。さらに本症例における5hmCの挙動についても詳細な解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
インプリンティング異常症例のバイサルファイト処理、パイロシークエンス解析は順調に進行している。また新規のインプリンティング異常症と思われる症例を発見し、論文報告を行った。
引き続きインプリンティング異常症例のバイサルファイト処理、酸化バイサルファイト処理を行い、メチル化ビーズアレイや次世代シークエンサーによる解析を実施し、一塩基レベルの“methylome”および“hydroxymethylome”を明らかにする。続いて、インプリンティング遺伝子の発現パターンと5hmCによる転写制御機構を解析する。さらに症例の脳サンプルの解析、および疾患特異的iPS細胞を用いたin vitroモデルに対して5mC→5hmC変換酵素TET1-3のゲノム編集によるノックアウトと神経分化誘導を行い、インプリンティング異常症の神経症状発症機構を解明し、症状を改善するエピゲノム治療薬の開発・発見を目指す。
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Journal of Medical Genetics
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Clinical Epigenetics
小児科臨床
巻: 72 ページ: 1683-1687