研究課題
「胆道系の恒常性維持は、胆汁中のEVに含まれる分子を介した伝達システムを用いた胆道を構成する細胞同士のクロストークにより成立されているのではないか?」という中心仮説を立て、それを示すために「①肝細胞由来のEVと胆管上皮細胞由来のEVは異なる成分を持つ、②それぞれのEV中の分子は下流の胆管上皮細胞に対して異なる細胞生物学的意味を持つ、③胆汁うっ滞性肝疾患ではEVに含まれる因子がさらに周囲の胆管上皮細胞の病態形成に影響する」という仮説を立てた。本年度研究ではマウスおよびヒト胆汁サンプルからのEVの分離法の確立をおこなった。さらに肝細胞及び胆管上皮細胞から分泌されるEVは有機酸や胆汁酸などとミセルを構成して粘稠度が高く通常の超遠心法などでは分離が困難である。そのため界面活性剤処理などの前処理を必要とし、その処理検体を超遠心法や比重遠心法、さらにカラムなどによる分離を行なった。さらに胆汁中EVの胆管上皮細胞及び腸上皮細胞に対する作用の検討もおこなった。上記NTA法で確認した分離EVを、培養ヒト及びマウス胆管上皮細胞の微絨毛を有する管腔側より添加し、細胞の変化を生理学的(胆汁分泌能、重炭酸濃度)、免疫学的(細胞内各種サイトカインmRNAの変化、管腔側培養上清中のフロービーズアレイアッセイ)、線維化能(MMPやコラーゲン産生能)について検討する。さらにEV添加された胆管上皮細胞から二次的に新たに放出されるEVを基底側腔及び管腔側よりそれぞれ回収し、2次的な細胞間クロストークについても同様の検討を行なった。
2: おおむね順調に進展している
H31年度に次世代シーケンサーの機器不調が、一部の実験系が予定よりも遅れたが、機器の入れ替えが進むにつれて進捗の回復がなされた。
概ね胆汁中からのEVの回収方法については目処が立ったため今後は細胞同士のクロストークの検討を主にin vivo実験系で検討を進めている。必要な細胞株、実験機器はすでに入手済みであり、本年度に検討を終了できる見込みである。
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Sci Rep.
巻: 11 ページ: 1195
10.1038/s41598-021-81023-y.