研究課題
本年度は当初研究計画に従い「マウス近位大腸特異的LRGCsの同定・単離法開発」および「マウスLRCGsオルガノイド移植による大腸炎粘膜再生・治療効果の解析」について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。1)近位大腸における分泌型細胞(杯細胞)の遺伝子発現における特徴を描出するため、Atoh1+/tdTomatoレポーターマウスを用いtdTomato+細胞をSortingにより回収しマイクロアレイ解析を行った。この結果、近位大腸の分泌型細胞(杯細胞)で高発現する遺伝子群 (近位/直腸の発現比が8倍以上)としてRegファミリー遺伝子等を含む37遺伝子を同定した。一方、直腸の分泌型細胞(杯細胞)で高発現する遺伝子群 (直腸/近位の発現比が8倍以上)としては同様にRegファミリー遺伝子等を含む70遺伝子を同定した。2)さらに同遺伝子発現データのGSEA解析では静止期(Quiescent期)を特徴づける遺伝子群の発現が高いことが示された。実際、免疫組織学的解析により、近位大腸におけるAtoh1陽性細胞は、直腸と比較してKi67陽性細胞及びBrdU陽性細胞が有意に少ないことが示された。3)更に近位大腸に見られるLRGCsの一部はc-Kit陽性細胞である可能性も示された。以上の結果より、マウス近位大腸のLRGCsを特徴づける複数の遺伝子発現パターンや特性が明らかとなった。一方、大腸より単離したLRGCsを含む細胞群を用いた移植系を確立するため、シングルセルを用いた際の適切な培養条件を検討したところ、Wntシグナル経路の活性化を強化するCHIR99021の添加等で培養効率の改善が得られること等が確認され、マウス大腸オルガノイド移植に必要な条件等の検討を終了した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画におけるマウス近位大腸特異的LRGCsを単離・同定するための複数の分子マーカー及び候補遺伝子群が明らかとなり、かつマウス大腸オルガノイド移植に必要な条件等の検討を終了していることから、当初計画に沿って概ね順調に進捗していると考えている。
本年度計画は概ね順調に推移していることから、当初計画に沿い、次年度以降は上記にて取得したデータ等をヒト近位大腸オルガノイドや潰瘍性大腸炎の活動期・寛解期粘膜の組織検体等を用いて、ヒト・マウスにおける共通性を含めた解析を行う計画である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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