研究課題/領域番号 |
19H03635
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
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研究分担者 |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30372444)
中川 美奈 東京医科歯科大学, 統合教育機構, 准教授 (30401342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / 肝細胞癌 |
研究実績の概要 |
本課題では、肝疾患における肝発癌・病態進展に関わる宿主およびウイルス要因を明らかとするとともに、それに基づいてヒトiPS細胞におけるin vitro解析系を構築し、機能解析を進めることを目的として研究を進めた。肝癌切除例を対象として、半導体シークエンサーを用いて癌関連54遺伝子2910箇所のHotspotに対してdeep sequenceを、TERT promoter領域のhotspotは direct sequenceを行い、肝細胞癌関連遺伝子プロファイルを網羅的に解析した。ウイルス性・非ウイルス性や、ウイルス制御の有無、および背景肝の違いによる発癌要因の差異について検討した。HCV関連肝癌では、HCV持続感染状態における発癌と、HCV排除後の発癌とでは遺伝子のプロファイルに大きな差はなかったが、後者ではTP53変異が低いなど脂肪肝やアルコールが関与する肝癌に類似していた。一方、HBV関連肝癌では、核酸アナログによるHBV制御下の発癌例ではTERT promoter領域の変異は低頻度で、HBV integrationの発癌への関与が示唆された。また、HCV感染のないHBV感染既往例の一部においてもHBV integrationの発癌への関与が示唆された。これらの知見に基づきヒトゲノムにHBV遺伝子をノックインした遺伝子改変ヒトiPS細胞を樹立し、病態解析モデルの基盤を構築した。本系において、HBVゲノムのintegrationにより細胞分化と増殖に変化が見られることが示唆された。さらにより生体に近い条件下での解析を可能とするために、肝細胞の形質を保持し長期継代可能な培養条件を探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルス制御下の発癌や感染既往を背景として肝細胞癌における遺伝子プロファイルを明らかとすることができ、その情報を基にヒトiPS細胞における遺伝子改変を進めることができた。またヒトiPS細胞から肝細胞の形質を保持しつつ長期継代かのうな培養条件を見出すことができた。肝病態を解析するモデル構築の基盤形成を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
肝癌の遺伝要因を解明するために、症例集積によるさらなる解析を進める。これらの遺伝情報を基に、通常の培養細胞とヒトiPS細胞における遺伝子改変を進め、肝病態をin vitroで解析するための基盤を構築する。さらに、肝細胞と間葉系細胞との相互作用を解析しうるモデル、および肝オルガノイドモデルの開発を進める。本研究ではこれらを統合的に推進することで肝病態形成機構・肝発癌機構の全容解明に関わる知的・技術的基盤の確立を目指す。
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