研究課題
浸潤性膵がんにおけるBrg1の機能を解明するため、dual recombinaseシステムを用いて、形成された膵がんにおいてタモキシフェン投与により任意の時期にBrg1をKOできる独自の膵がんモデルマウスを作成した。このマウスに形成された膵がんから細胞株を樹立し、Brg1をKOすることにより、増殖・浸潤・転移への影響について検討した。増殖能に関しては、Brg1 KOマウス膵がん細胞では増殖が著減し、cleaved caspase3の増加により、アポトーシスが著増することが判明した。さらに、in vivoでも、Brg1 KOにより膵がんの増大が抑制されることを見出した。脾臓移植肝転移モデルにおいても、Brg1 KOにより転移能が著しく抑制されることを見出した。重要なことに、Brg1 KO群で形成された肝転移巣は、全てBrg1陽性の膵がん細胞(Brg1 KOを免れたescaper細胞)のみで構成されており、Brg1陰性の膵がん細胞はみとめられなかった。さらに、Brg1を KOした膵がん細胞を皮下、腹腔内にも移植した結果、同様の結果が得られた。以上より、マウス膵がん細胞の転移巣形成にはBrg1が必須であることを明らかにした。以上より、マウス膵がん細胞はBrg1欠失により、増殖・浸潤・転移がいずれも著明に抑制されることが示され、BRG1を標的とした膵がん治療が有効となる可能性が強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
概ね予定通りに研究が進捗しているため。
Brg1が膵癌の増殖・浸潤・転移に重要な働きをしていることがこれまでの研究で明らかになった。今後のそのメカニズムについても明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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