研究課題/領域番号 |
19H03640
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 靖人 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 客員教授 (90336694)
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研究分担者 |
佐藤 悠介 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10735624)
大石 久史 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30375513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HCV / 肝線維化 / TLL1 / miRNA / LNP |
研究実績の概要 |
わが国で肝細胞癌の発症要因として最も多いC型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療は飛躍的に進歩し、ウイルス排除が可能となった。しかし、HCV排除後の肝発癌が問題となっており、そのリスク因子である肝線維化の制御は重要な課題である。 本研究では新たな治療法の開発を目指して、①HCV排除後の肝発癌に関連するリスク因子である、Tolloid-like 1(TLL1)による新たな肝線維化メカニズムの解明、②肝細胞特異的ヒトTLL1高発現マウス系統の樹立と肝臓特異的マウスTll1欠損マウスの作製および解析、③コラーゲン遺伝子発現を制御するマイクロRNA-6133(miR-6133)標的分子の同定とその制御機構の解明、④マイクロRNA(miRNA)送達脂質ナノ粒子の実用化を目指した製剤検討、を行い、線維化促進サイトカインであるTGFβとTLL1の関係、新規の肝線維化・肝発癌メカニズムやマイクロRNAによる直接的・間接的な標的分子の制御を明らかにする。 令和2(2020)年度は、樹立したマウス系統(肝細胞特異的hTLL1高発現マウス、mTll1 floxマウス、mTll1 Tgマウス)を用いてTLL1と肝発癌の関連について引き続き検討を行った。さらに条件的mTll1ノックアウトマウス、肝細胞特異的ヒトTLL1遺伝子発現マウスの作出を行った。また、siRNAをモデル核酸としてマイクロ流体デバイスiLiNPによるsiRNA搭載脂質ナノ粒子(LNP)について、複数のsiRNA搭載LNPを製造し、肝実質細胞における標的遺伝子発現効率を指標として最適なLNPを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TLL1の機能解析、肝線維化および肝発癌の経時的な解析を実施するため、mTll1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス作出を進めており、条件的mTll1遺伝子ノックアウトマウス(floxedマウス)を3系統樹立した(Tll1-flox/flox, CAG-MerCreMer Tll1-flox/flox, Alb-CreER Tll1-flox/flox)。さらに組織特異的なCre発現マウスの作出を進めている。また、複数のsiRNA搭載LNPを製造し、肝臓における遺伝子ノックダウン活性を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
mTll1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス作出を継続している。樹立したマウス系統と新たなmTll1ノックアウトマウスを用いて肝線維化の亢進やTGF-βシグナルの増強、肝がん誘発の有無をさらに検討する。また、肝細胞特異的TLL1ノックアウトマウスについては高脂肪食や薬剤誘導性肝線維化の軽減の可能性を探る。 至適と同定したsiRNA搭載LNPの安全性を検証するため、LNPをマウスに静脈内投与し、標的臓器である肝臓におけるイオン化脂質を定量する。
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