研究課題/領域番号 |
19H03644
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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研究分担者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70550961)
山内 明 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80372431)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 2DG-PLGA / ナノ粒子 / 肝細胞癌 / 腫瘍免疫 / 糖代謝 / Warburg効果 |
研究実績の概要 |
2DG-PLGAはchemokine(CXCL9/10/11)産生を介してがん微小環境におけるCD8陽性細胞の浸潤を促進した。いわゆるimmune hotな状態に変換することで、がん免疫サイクルにおいて血管新生阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤とは異なる作用ポイントで腫瘍免疫を賦活化することを明らかにした。これにより、血管新生阻害剤との併用による抗腫瘍効果増強や免疫チェックポイント阻害剤抵抗性腫瘍に対しても抗腫瘍効果を発揮することを明らかにした。 さらにがん微小環境の構成細胞である腫瘍関連マクロファージ(TAM)や骨髄系由来抑制細胞(MDSC)に対する2DG-PLGAの効果を検討したところ、immunocompetentな肝発癌マウスもでるにおいてこれらの細胞に発現されるCD11bを指標にCD11b陽性細胞が2DG-PLGAにより有意に抑制されることを確認した。さらに、in vitroにおいて高グルコースにによる血管内皮細胞の増殖やtube formation抑制が2DG-PLGAにより抑制されることを確認した。以上の成績は2DG-PLGAがCD8陽性細胞のみならずがん微小環境の種々の構成細胞に対してがん増殖抑制的に作用することを示すデータと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2DG-PLGAの殺細胞効果に加えてがん細胞特異的糖代謝阻害による乳酸産生抑制、IFN-γ産生を介しがん細胞とT細胞でのchemokine (CXCR9/10/11)産生亢進を明らかにした。これによりCD8陽性細胞ががん微小環境に集まり、いわゆるimmune-hotながんにすることで従来の分子標的薬の効果を増強したり、あるいは免疫チェックポイント阻害剤抵抗性の腫瘍に対しても2DG-PLGAが抗腫瘍効果を発揮することを明らかにすることができた。以上の成績をCell Mol Gastroenterol Hepatol 2021:11;739-762に発表し、「医薬生成物及び腫瘍免疫促進剤」として、国内では特許査定済(特願2019-527016)であり、日本に加えて米国、欧州、中国へ移行済である。
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今後の研究の推進方策 |
2DG-PLGAの臨床応用を目指し日本医療開発機構(AMED)の橋渡し研究戦略的推進プログラムpreB(拠点:九州大学)に応募し、拠点での採用に引き続き先日AMEDによるヒアリング審査を受けた。現在、非臨床試験の計画を準備を進めるとともに、PMDA薬事相談との準備も進めている。
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