本研究は、炎症性腸疾患(IBD)においてIL-10を産生する制御性B細胞(Breg)と制御性形質芽細胞(Preg)、およびIL-12を産生するナチュラルキラー様B細胞(NKLB)の分化誘導が炎症の終息(ターミネーション)に寄与するという新たな概念の証明を目的としている。COVID-19の影響でマウスコロニーを減らし、その後リンパ腫の自然発症によりコロニーの回復が遅れていたが、Pregを欠失したマウス群(Blimp1欠失) を様々な組み合わせのbreeding pairsを作成し実験可能な引数を得る事が出来た。よって、これらのマウスをレシピエントとして用いる延期していた細胞移入実験を行った。Preg細胞とNKLB細胞の相互作用検討のため、腸炎モデルであるT細胞受容体(TCR)α-/-マウスにIL-10産生時に緑色蛍光を、又はIL-12p40産生時に黄色蛍光を発するように遺伝子操作したマウスをドナーとして使用した。腸炎発症前のドナーからB細胞を精製し、腸炎を発症し下痢を認めるレシピエントに移入して、腸炎依存性の分化を検討した。細胞起源の同定のため、ドナー細胞として、骨髄細胞、腹腔内B1細胞、脾臓B細胞、腸管膜リンパ節B細胞を用いた。興味深い事に、Blimp1の機能は正常でありながらも、腹腔由来B1細胞、脾臓とリンパ節由来B細胞は、腸炎下でもPreg細胞への分化を認めなかった。一方、Blimp1の機能が正常な骨髄細胞の移入ではPreg細胞への分化が認められた。よって、Preg細胞は抗原記憶を有さない骨髄由来の未成熟B細胞からBreg細胞を経由せず直接分化する可能性が示唆された。一方、NKLB細胞への分化は、全ての細胞移入の実験系で認められず、Breg/Preg細胞とNKLB細胞の起源が異なる事が明らかとなったが、NKLB細胞の起源を示唆できる結果は得られなかった。
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