研究課題
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、依然として内科的根治療法のない致死性疾患である。病態の基盤は肺動脈血管平滑筋細胞の癌類似の増殖性亢進にあるが、その機序も不明であり、病因蛋白の探索と病態に根差した根本的治療薬の開発が求められている。肺移植施設である東北大学病院は重症患者を多く抱え、肺血管拡張薬の多剤併用療法によっても助けられない症例が依然多く、基礎研究とその臨床応用研究を長年継続してきた。これまで、ライブラリー化した患者由来の肺組織や肺動脈血管平滑筋細胞を用いて網羅的オミックス解析や候補遺伝子・病因蛋白の大規模スクリーニングを行い、PAH病因蛋白群を発見した。最初に発見したSelenoprotein Pについては血液中で測定可能な分泌蛋白であり、血管平滑筋細胞で欠損させることにより、PAHを改善することに成功した (Circulation 2018)。次に発見したADAMTS8についても、右室機能低下との関連も確認された(Circulation Research 2019)。そこで本研究では、以上の知見に基づき、全く新しいPAHの早期診断技術開発とアカデミア創薬の臨床応用を目指すこととした。2019年度は、セレノプロテインPについての新しい独自の診断試薬開発に成功した(ATVB 2019)。また、セレノプロテインPの発現抑制を指標にした創薬スクリーニングによって、天然化合物数種類を見出している。この低分子化合物は、肺高血圧モデルラットでの治療効果を示し、肺組織でのセレノプロテインP発現レベルを低下させることが分かった。一方で、ADAMTS8の発現を低下させる低分子化合物のスクリーニングも実施し、二種類の化合物を発見した。これらも、動物モデルでの治療効果を確認し、特許出願を行っている。このように、当初計画は順調に進んでおり、今年度もこれまで通り、研究を進めていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
概要で述べた通り、Selenoprotein Pについては血液中で測定可能な分。次に発見したADAMTS8についても、右室機能低下との関連も確認された。2019年度は、セレノプロテインPについての新しい独自の診断試薬開発に成功した。また、セレノプロテインPの発現抑制を指標にした創薬スクリーニングによって、天然化合物数種類を見出している。この低分子化合物は、肺高血圧モデルラットでの治療効果を示し、肺組織でのセレノプロテインP発現レベルを低下させることが分かった。一方で、ADAMTS8の発現を低下させる低分子化合物のスクリーニングも実施し、二種類の化合物を発見した。これらも、動物モデルでの治療効果を確認し、特許出願を行っている。このように、当初計画は順調に進んでおり、今年度もこれまで通り、研究を進めていく予定である。
肺高血圧症患者は臨床的に大きく5群に分けられるが、PAH(第1群)の中でも個々の患者の疾患背景は、特発性や膠原病、シャント疾患など多彩である。本年度は、これまで蓄積した情報を多角的に解析することで、患者背景ごとの病因蛋白を見出していく。それにより、個々の症例の病因蛋白に応じて、より有効な薬剤選択が可能なデータベースとアカデミア創薬を進めていく。これまでの臨床分類に加えて、病因蛋白別の分類を行うことで、きめ細かい早期診断とそれに応じた治療薬選択が可能な次世代型先制医療の基盤を作る。その実現のために、これまで蓄積したPAH病因蛋白群の情報を横断的かつ多角的に解析する。このように、今年度は、肺高血圧症の全く新しい病因蛋白群を標的とし、患者個々の全く新しい早期診断法や根治的治療薬の開発を目指す解析を進めていく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件、 オープンアクセス 18件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 9件、 招待講演 13件) 図書 (6件)
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