研究課題/領域番号 |
19H03650
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
清水 逸平 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (60444056)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心不全 / 褐色脂肪 / コリン代謝 |
研究実績の概要 |
肥満や心不全に伴い褐色脂肪不全が生じ、これらの加齢性疾患の病態が増悪することが明らかになりつつある。 心不全時に生じる褐色脂肪不全の意義についての検討を今年度行った結果、1)褐色脂肪機能を抑制(褐色脂肪除去モデル)すると酸化型コリンが血液中で増加すること、2)酸化型コリンがミトコンドリア電子伝達系の複合体Ⅳの機能を抑制することで心筋細胞が代謝不全に陥ること、3)B6化した遺伝子改変褐色脂肪不全マウス(以前はmixed backgroundであった)でも心不全が増悪すること、4)PET-CTによる検討の結果、心不全患者では褐色脂肪が検出されないこと、が明らかになった。 コリン→酸化型コリンへの変換はコリン変換酵素(COE)の関与が想定される。そこでCOE全身ノックアウトマウスを作製し左室圧負荷モデルによる検討を行った結果、酸化型コリンのレベルが低下し心不全が改善することがわかった。血管内皮細胞が主にCOEを発現していることが予備的検討の結果想定された。そこでCre-Loxシステムを用いて血管内皮細胞特異的にCOEをノックアウトするマウスを作製したが(EC-COE KO)、心不全改善は認められなかった。内皮細胞以外の細胞も酸化型コリンの産生に関与している可能性が示唆された。酸化型コリンは様々な病態で増加する可能性があり、東北メディカルメガバンクと共同研究を行い、数千人規模のヒト検体を用いた検討を行う予定である。また、腸内細菌の関与を検討するために、抗生剤投与マウス、無菌モデルマウス等を用いた検討も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は老化促進代謝物質が増加するメカニズムの探索、であった。上述のごとくおおむね順調に視点している。コリン→酸化型コリンへの変換はコリン変換酵素(COE)の関与が想定される。全身COEノックアウトマウスは心不全が改善し、酸化型コリンのレベルが低下することがわかった。血管内皮細胞が主にCOEを発現していることが予備的検討の結果想定された。そこでCre-Loxシステムを用いて血管内皮細胞特異的にCOEをノックアウトするマウスを作製したが(EC-COE KO)、心不全改善は認められなかった。内皮細胞以外の細胞も酸化型コリンの産生に関与している可能性が示唆され、現在追試を行っているところである。交感神経遮断マウスモデル、in vitroの系も用いた検討の結果、過剰な交感神経刺激により褐色脂肪が細胞死することも明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
心不全時に酸化型コリンが増えるメカニズムに関して今後腸内細菌の関与の検討を、抗生剤投与マウス、無菌マウスを用いて検討する予定である。COE抑制薬を用いて内因性のメカニズム及び腸内細菌によるメカニズムの両者をメタボロームフラックス解析で検討する予定である。酸化型コリンは様々な病態で増加する可能性があり、東北メディカルメガバンクと共同研究を行い、数千人規模のヒト検体を用いた検討を行う予定である。EC-COE KOマウスを用いた検討は追試する予定である。心不全患者におけるPET-CTを用いた検討は症例数を増やして追試中である。酸化型コリンは心臓に加え、骨格筋機能不全を惹起する可能性があり検討を行う。また、酸化型コリン→ミトコンドリア複合体障害、の経路はラマン分光法も用いて共同研究者と検討を行う予定である。
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