研究課題
本研究の目的は、循環器疾患(心不全/心房細動/動脈瘤/大動脈解離)の発症における腸内細菌叢の役割・因果関係を調査し、関連メカニズムを解明して、新規の治療標的を探索することである。可能な範囲で、(1)臨床研究でのヒト糞便中の腸内細菌叢と疾患との関連を調査すること (2)マウス疾患モデルでの解析や腸内細菌への介入治療を実施して、有用性の有無を作用機序の解明をめざす。臨床研究と基礎研究(動物実験)の融合研究で進めていく中で、臨床応用できる新規治療標的・治療法を探索する。今年度は、主に大動脈瘤の研究と、腸内細菌由来の炎症惹起物質であるリポポリサッカライド(LPS)の研究を実施した。以前の研究で、コントロール患者に比較して冠動脈疾患患者糞便中の濃度上昇を確認したLPSに関する動物実験を実施した。動脈硬化モデルマウスに大腸菌LPSの腹腔内投与を行い、動脈硬化の増悪につながるのかを検証した。マウスにLPSを腹腔内投与すると、数日遅れて動脈硬化巣に好中球のネットーシス(NETs)が観察され、マクロファージからのケモカインの産生の増加も関連して炎症が悪化し、動脈硬化が増悪する機序が解明できた。大動脈瘤マウスモデルに対して、非吸収性抗生物質の経口投与によって腸内細菌のほとんどいない環境にすると、動脈瘤の形成が抑制できることをを証明した。脾臓の単球系の分化抑制、結果としての単球数の減少が観察され、腸内細菌からの免疫細胞の制御機構の一つが解明された。臨床研究にて腹部大動脈瘤患者と生活習慣病コントロール患者の腸内細菌叢の調査が終了し、解析もほぼ終了した。ある腸内細菌代謝物を産生する酵素が、大動脈瘤患者群で減少していることが判明し、実際の血中での測定や、動物疾患モデルに対しての介入実験などを予定している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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