研究課題/領域番号 |
19H03654
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐田 政隆 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (80345214)
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研究分担者 |
福田 大受 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (40637568)
添木 武 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任教授 (60393211)
堀川 一樹 徳島大学, 先端研究推進センター, 教授 (70420247)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 自然免疫 / 慢性炎症 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
動脈硬化は動脈壁、メタボリックシンドロームは脂肪組織における慢性炎症を基盤にしているという概念が確立している。しかし、生活習慣病によって、動脈壁や脂肪組織に如何に慢性炎症が惹起されるのか不明な点が多い。そこで、本研究では、動脈や脂肪組織において、生活習慣病によって誘導される細胞死と慢性炎症の関連ならびにその分子機序の解明、さらにはそれに基づく治療法の開発を目指した。 アポリポ蛋白E欠損(ApoE KO)マウスにAngiotensin Ⅱ (Ang Ⅱ)を投与することで、血漿中の1本鎖DNAなどのcell free DNA (cfDNA)が増加した。大動脈において、cfDNAの受容体となりうるTLR9の発現がAng Ⅱ投与により有意に増加し、主たる発現細胞はマクロファージであった。TLR9/ApoE 2重欠損(dKO)マウスを確立し、AngⅡ投与下で誘導される動脈硬化病変を解析した。両群間で体重、血圧、血漿脂質値に差を認めなかったが、TLR9/ApoE dKOマウスの動脈硬化病変およびプラーク内脂質量は、ApoE KOマウスに比べて有意に少なかった。また、TLR9/ApoE dKOマウスの腹部大動脈において、MCP-1などの炎症性物質の発現やマクロファージの浸潤が減少していた。さらに、骨髄移植実験により、血管壁より骨髄のTLR9が重要であることが明らかとなった。また、TLR9のアゴニストやAng Ⅱなどで傷害を与えた血管内皮細胞を用いてマクロファージを刺激することで、NF-κBシグナルの活性化が認められ、TNF-αやMCP-1などの炎症関連分子の発現が有意に増加した。 以上より、血管傷害により遊離したcfDNAが、マクロファージTLR9を活性化し血管の炎症を惹起し、動脈硬化の進展を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね、予定していたマウスの交配は成功して、動脈硬化の慢性炎症に自然免疫が関与していることを明らかにすることができた。生活習慣病で細胞変性が生じて、そこから遊離した自己DNAが、本来バクテリア由来のDNA認識で生体防御に働くTLR9に作用して慢性炎症の原因となることを初めて明らかにした。治療法の開発に役立てることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
他の核酸受容体の欠損マウスやDNA処理機構の遺伝子を改変したマウスを用いて、生活習慣病による慢性炎症における自然免疫の役割を明らかにしていく。更に、ヒトサンプルを対象にして、ヒト動脈硬化における自己DNA-核酸受容体の役目を明らかにしていく。また、自然免疫をターゲットとした動脈硬化の治療法を開発する。
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