当該研究は治療応用可能なゲノム編集システムの開発を目的としている。本年度は、昨年度までに構築したGalNAcリガンドを搭載した改良型CRISPR/Casシステムのin vitroでの活性評価ならびにin vivoでの動態、活性評価を進めた。具体的には、高度に化学修飾を施した各種crRNAおよびgRNAとCas9タンパク質との複合体について、培養細胞でのゲノム編集効率の評価を行った。化学修飾の高度化に伴いヌクレアーゼ抵抗性が改善された一方で活性の減弱は確認されたものの有意なゲノム編集が認められた。各種コンストラクトについてin vivoイメージングおよびex vivoイメージングを実施し、臓器分布に関する評価を行った。これら改良型CRISPR/Casシステムは首尾良く狙いの臓器に移行することが明らかとなったが、一方で標的臓器である肝臓におけるゲノム編集効率は検出限界以下であった。このことは、ゲノム編集効率の評価方法の問題、RNP複合体の安定性の問題、ならびに当該システムが標的臓器へ移行した後の細胞内動態の課題が考えられた。現在、臓器全体におけるゲノム編集効率が小さい場合にそれを検出する方法の検討、RNP複合体の安定性を高めるための分子設計の再考、複合体の細胞内動態を改善するための動態制御技術の模索を並行して進めており、コンセプト実証にとどまらず引き続き「実用化」を志向した技術の改良を進めている。
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