研究課題/領域番号 |
19H03659
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
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研究分担者 |
熊澤 拓也 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10745441)
尾上 健児 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (90510173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アフターロードミスマッチ / 急性心不全 / 慢性腎臓病 / ββ1アドレナリン受容体 / LncRNA |
研究実績の概要 |
急急性心不全の発症病態の1つとして急性の後負荷に対する不適合(afterload mismatch)としてよく考えられ、特にCKDに合併する心不全ではその頻度が多い。しかし、その分子機序は明らかではない。申請者らは、独自に開発したCKDモデルマウスに後負荷刺激した時に、特異的に発現低下するLong non-cording RNA X(LncRNA X)を発見し、このLncRNA XはMEKに結合してその活性を低下させるが、この低下により後負荷(TAC)処理をすると心機能が低下することを確認している。また、急性心不全の原因の一つである、タコツボ型心筋症の発症にβアドレナリン受容体(βADR)の活性化とそれに引き続いて生じるβADRの脱感作が関与していることを提唱してきた。 本研究では、afterload mismatchの発症における、心臓と血管のβADRの脱感作(心筋の収縮性の低下と血管の収縮を引き起こす)とLncRNA Xの意義を実験的に検証するために、1)β受容体の脱感作に関与しているGRK2とβarrestin-2を心筋細胞と血管平滑筋細胞に過剰発現させるための、心筋に選択性の高いAAV9-GRK2とAAV9-β-arrestine-2を、血管平滑筋に選択制の高いAAV2-GRK2とAAV2-β-arrestin-2を作成し、実際に心筋細胞と血管平滑筋細胞への過剰発現をin vitroで確認した。 LncRNA Xに関しては、TACにてLncRNAXの低下と心機能の低下をきたすが、LncRNAXの発現低下の機序を検討しp53の活性化が関与していることを認めた。また、ヒトでのホモローグを探索にあたり、単純なホモロジー検索では、目的のLncRNAをターゲットできなかったので、MEKをベイトにlncRNAを探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目は、β受容体の脱感作の意義を検証するための、道具作りが、進行している。しかし、実際のin vivoの実験までは着手できていない状況である。 LncRNAXの発現低下機序としてp53の活性化低下の実験を優先したために、in vivoでの実験がやや遅れ気味である LncRNA Xは先行研究でMEKに直接結合して、MEK-ERK pathwayを抑制することを明らかにしているが、マウスLnc RNAXはヒトMEKに結合することが確認されたので、lncRNA Xの今後の発展を考えるとヒトホモローグの探索を優先した。
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今後の研究の推進方策 |
1)今年作成したAAV9-GRK2, AAV9-β-arrestin2、をマウスに導入する。その後、カテコラミン刺激とTAC負荷を行い、心不全の発症をin vivoで確認する。 AAV2-GRK2, AAV2-β-arrestin2をマウスに投与し、in vivoで血管平滑筋細胞に十分な GRK2とb-arrestin2が発現しているかを検討し、カテコラミンに関する血管の収縮をin vivo イメージングを用いて確認する。 2)LncRNA XとLncRNA XをノックダウンするsiLncRNA XをAAV9に導入し、その作用をさらに検討する。予備実験では、上述した様にTAC負荷を行ったsFlt-1 KOマウスに AAV9 LncRNAXを投与すると、心不全による死亡率を減少することに成功しているが、さらに、in vivoでMEKの活性が回復しているか、また、その裏の実験であるAAV9 siLncRNA Xを野生型マウスに導入して、TAC負荷を加え、sFlt-1KOで得られている易心不全発症性の再現を確認する。
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