研究課題/領域番号 |
19H03662
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
内藤 篤彦 東邦大学, 医学部, 教授 (10588891)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷 / DNA損傷応答 / トランスポゾン / 細胞種間差 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非分裂細胞である心筋細胞と分裂増殖する細胞のDNA損傷応答機構の違いを明らかにし、心筋細胞特有のDNA損傷応答機構を規定するメカニズムを解明することである。 2019年度にはDNA損傷を時間的・空間的・定量的に制御する実験系として、miniSOGタンパク質を用いた光誘導性システムを構築しようと試みたが、miniSOG遺伝子産物の「リーク」、すなわち光をあてなくてもROSを産生する性質、に起因すると想定される細胞障害性のため、安定的な細胞株を構築することができなかった。 ゲノム全域にわたって散在するレトロトランスポゾンの一種であるLINE-1またはSINE-1に特異的なgRNAと誘導性のCas9およびCas9 nickaseを細胞に導入することで、安定的にDNA損傷を誘導するシステムの構築については、gRNAのデザインに難渋しているが、別の研究グループからLINE-1に対するCRISPR/Cas9を利用した変異導入に関する論文が報告されたため、2021年度は同配列を利用した実験系の構築を行う。 2020年度には非分裂細胞である心筋細胞と分裂増殖する細胞のDNA損傷応答機構の違いを明らかにするため、DNA一重鎖切断を誘導できると考えられる、PARP阻害薬を作用させる実験系を構築した。2019年度に実施したTopoisomerase阻害薬による結果と同様、DNA損傷後のDNA損傷応答シグナルの活性化に細胞間で違いが存在するだけでなく、細胞表現型の方向性(細胞機能の向上・低下)に違いがあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
miniSOGを用いた研究は、過去の論文を再現することができず頓挫した。トランスポゾンを標的とした実験系構築も難航している。一方、作用機序が明らかな薬物を利用した実験系を通じて、目的である心筋細胞と非心筋細胞のDNA損傷応答の違いに関するデータが得られており、実験は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には引き続きDNA損傷を時間的・空間的・定量的に制御する実験系を構築するとともに、心筋細胞と非心筋細胞のDNA損傷応答機構の違いを明らかにするための薬理学的実験を行う。DNA一重鎖切断、DNA二重鎖切断を心筋細胞と非心筋細胞に加えた後の表現型の違いについて、遺伝子発現解析を通じた分析を行い、論文発表を行う。
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