研究課題
令和2年度は,B)ラットモデルで肺動脈病変部へ動員された非Lung-EPCsの由来解明,を目ざした.ラットの異性間肺移植実験により,肺動脈病変部で非Lung-EPCsの存在する可能性が示されたが,その由来は不明である.一般的にBM-EPCsと予測されるが,他組織の正常血管にあるEPCsであれば,骨髄由来にくらべ効率的に修復再生をになう可能性が高い.肺動脈病変部へ動員された細胞の由来を明らかにするため,骨髄細胞のトラッキングのため、以下の実験を試みた.ア:オスSprague-Dawley(SD)ラットにオスGFP発現SDラットの片肺を移植する.イ:アの逆の肺移植をおこなう.ウ:オスSDラットにオスGFP発現SDラットの骨髄を移植する.エ:オスGFP発現SDラットにオスSDラットの骨髄および片肺を移植する.上記ア,ウ,エにあるような肺および骨髄移植実験をおこない,肺動脈病変部へ動員されたGFP陽性細胞を病理学的に確認する.由来解明1: 上記アのレシピエント肺の場合,GFP陽性EPCsが存在すれば対側肺由来となる.由来解明2: 骨髄およびそれ以外の組織から動員されるEPCsを確認するため,上記ウおよびエの実験をおこなう.アでGFPラットの肺移植を試みた.しかしGFPマウス同様、遺伝子改変ラットのため,手術の侵襲に耐えられず,wildラットのようには肺移植が成功しなかった。ウの実験を行い、キメララットを作成した。同ラットもやはり肺移植の侵襲には耐えられなかった。これらキメララットにSU5416/低酸素処理によりPAHを誘発したが、明らかにwildラットに比し、肺高血圧症の程度も、肺動脈リモデリングも軽症であった。また、軽症だがキメララットもPHを誘発し、肺動脈リモデリング部位にGFP陽性細胞が動員されることを確認した。
3: やや遅れている
上述したように,GFP発現モデルは遺伝子改変動物のため移植時週齢の体重がwild個体と異なり,さらに手術の侵襲にも弱く,現在も肺移植は成功していない.そのため上述のような当初の予定通りの研究は進行していない。しかし、骨髄キメララットでのPAH誘発実験により、別の角度から肺動脈リモデリングにおける骨髄細胞の関与を証明する可能性が出てきた。
今回GFPキメララットのPAHモデルにおいて,肺動脈リモデリング部位に骨髄細胞が動員されることを証明した。しかし、骨髄移植ラットでは肺高血圧の程度および肺動脈リモデリングの程度が、wildラットより軽いことから、やはり骨髄細胞の動員が肺動脈リモデリングに重要な役割を持ち、つまり骨髄機能の低下は肺動脈リモデリングの進行を抑制する可能性が示唆された。今後をこの点を実証するための研究も推進していく。
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