研究課題/領域番号 |
19H03669
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 拓児 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80344670)
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研究分担者 |
久田 修 自治医科大学, 医学部, 講師 (60466571)
間藤 尚子 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80406149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺胞蛋白症 / サーファクタント / マクロファージ / 細胞治療 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
遺伝性肺胞蛋白症は、GM-CSF受容体遺伝子変異により肺サーファクタントが肺の末梢気腔内に貯留し呼吸不全に至る難治性呼吸器疾患である。本研究では、これまでなかったマウス疾患モデルであるCsf2ra欠損マウスを使用し、肺へ直接マクロファージを移植する治療(PMT)について、(1)前臨床試験としてドナー細胞の種類や細胞数など詳細な治療条件検討を行い、(2)iPS細胞由来マクロファージの特徴を解析し同細胞のPMT治療への可能性 を探り、(3)ゲノム編集技術を用いた病態解析とPMT治療への応用について研究する。本研究により肺サーファクタントの病態生理機構の解明と難治性呼吸器疾患の次世代細胞治療の基盤を構築することを目的としている。 PMTのドナー細胞として、野生型マウスの骨髄細胞から分化誘導した骨髄由来マクロファージを2x10^6個準備し、Csf2ra欠損マウスに肺マクロファージ移植治療をおこない、その病態改善効果を検討した。PMTを行った2か月後に、肺胞洗浄(BAL)液の混濁度(OD=600)、サーファクタント (SP-D、脂質、コレステロール濃度)、サイトカイン(GM-CSF、M-CSF、MCP-1)の濃度、およびBAL細胞の遺伝子発現を解析した。無治療群と比較してPMT治療群ではいずれの項目も有意な改善がみられている。臨床応用に向けて拒絶反応のない患者自身の細胞を使用するsyngeneicな系を想定し、Csf2ra欠損マウスの骨髄細胞にCsf2raレンチウイルスベクターによって欠損分子を発現させてマクロファージを誘導し、PMTによる効果について検討した。Csf2raベクターの発現によってノックアウトマウス細胞の機能が回復する事が示された。また、野生型マウス骨髄由来マクロファージのPMTと同様に、無治療群と比較してPMT治療群ではいずれの項目も有意な改善がみられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では骨髄由来マクロファージで十分な結果が得られたため、腹腔マクロファージと肺胞マクロファージをCsf2ra欠損マウスに移植する実験は行わなかった。1x10^6個および2x10^6個の移植ではどちらも有意な治療効果がみられているが、他の細胞数での至適細胞数の検討は行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、一回の投与後にその治療効果がどの程度の期間持続するか、という長期効果について探索ならびに至適細胞数について研究する。また、患者iPS細胞由来マクロファージについてCRISPR/Cas9によるゲノム編集による遺伝子修復の評価を行う。正常iPS細胞由来マクロファージ、患者iPS 細胞由来マクロファージ、遺伝子修復後患者iPS 細胞由来マクロファージの3種類について、フローサイトメトリーによるその表面発現分子について、GM-CSFレセプター機能、細胞内シグナル伝達(GM-CSF刺激後STAT5リン酸化測定 )、サーファクタント処理能および貪食能について比較解析する。
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