研究課題/領域番号 |
19H03670
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 杏林大学, 医学部, 教授 (20170764)
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研究分担者 |
片岡 雅晴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20445208)
蒲生 忍 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問教授 (90122308)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)のうち基礎疾患が明瞭でない症例の3割前後に、BMPR2遺伝子及びその他の遺伝子変異を併せた遺伝的背景が認められるが、残りの特発性症例の発症原因は未解明である。我々を含め多くが原因究明に採用する全エキソーム解析は効率的だがスプライシングや転写制御領域は十分に解析できない。これらの同定にはトランスクリプトームの解析が必須である。 本研究では最新の遺伝子変異検出法を応用し、PAHでスプライシング異常や発現異常を起こす変異の網羅的探索が達成されるか、結合組織病や先天性心疾患に合併するPAHにおいて新たな原因/感受性遺伝子や合併の有無を分ける遺伝的背景が存在するのか、について検証する。さらに、これら疾患の遺伝的背景の全容を解明し、統合的な遺伝子診断カタログを作成し、情報共有化・発症予防法/早期発症予知法の開発に繋げ、臨床的寄与を目指す。 2019年度の研究実績としては、連携他施設へも働きかけ、バイオバンクを強化し、収集PAHサンプル数を拡張し、全エキソーム解析を実施した。また、一部のサンプルでは対となるトランスクリプトーム解析を実施している。先天性心疾患/結合組織病合併PAHにも対象を広げて検証中である。 積極的な治療にも関わらずに残念ながら死亡の転帰を辿り、病理解剖・エキソーム解析された患者検体が本バンクに含まれている。この検体と関連疾患の剖検検体も用いて、可能な限り肺以外の組織も含めたより詳細な病理学的解析とトランスクリプトーム解析を今後さらに施行していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度から2020年度へ一部繰り越しをしたが、2020年度中に2019年度からの繰り越し額を含めて解析を実施しており、研究は全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続いて検体収集を継続する。さらに、全エキソームとトランスクリプトームのデータを用いて、SAVNet解析システムによって従来の解析で発見できなかったスプライシング及び発現異常の原因となる遺伝子変異を網羅的に検出する。 また、従来世界的に遺伝子解析は基礎疾患のない特発性PAHに集中しており、先天性心疾患/結合組織病合併PAHの疾患原因/感受性遺伝子は注視されていない。しかし、先天性心疾患/結合組織病合併PAHにおいても原因/感受性遺伝子の存在が示唆される報告が、我々の報告も含め相次ぐ。我々の保有するバイオバンク試料のさらなる全エキソーム・トランスクリプトーム・SAVNet解析システムによる解析によって、先天性心疾患/結合組織病合併PAHに関与する遺伝的変異を、スプライシングや発現異常に関する変異等を含めて網羅的に探索する。 さらに、ToMMoのデータに基づいたSNP約67万個が搭載されて日本人に特化したマイクロアレイを用い、特発性PAH及び先天性心疾患/結合組織病合併PAH患者試料のSNPを決定、ToMMoの最新日本人ゲノムレファレンスデータを利用したimputation法によりゲノムを再構築する。SAVNet解析の結果、日本人健常者集団や公開されている他の疾患データとの比較によって、疾患関連領域の同定と疾患関連遺伝子の探索、さらにスプライシング変異等も含めた網羅的解析を目指す。特に極めて稀な変異のみならず、一般集団での1%程度に見出される比較的高頻度の多型的な変異にも注目し感受性遺伝子の探索を目指す。 以上の研究成果を集約し、肺高血圧症の遺伝子診断カタログ作成を達成するよう取り組む。
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